年明け早々ラスベガスで開催された世界最大の家電製品見本市のCESでも注目を集めたVR関連製品。
VRというと、どうしてもゲームやエンターテインメントの分野が注目されがちですが、ビジネスの分野でも様々な形で活用事例が出てきています。
今回の記事では、ビジネス分野におけるVRの活用事例についてまとめてみたいと思います。
【目次】
VRは現在ゲームなどの分野だけでなく、さまざまなビジネスの分野でも活用され始めています。
なぜビジネスの分野にVRを導入するのか?それは、VRを導入することによって様々なメリットや可能性が生まれるからです。
VRがどのようにビジネス分野に活用されているかを紹介する前に、どのような可能性が得られるのか、ここでは紹介します。
VRを利用することによって、従来よりもさらに自社の商品を顧客に対してPRすることが可能になります。
実際に商品を使わなければ、その商品の魅力が伝わりにくい商品やサービスでもVRを使用することにより、これまでよりもさらに魅力を伝えることができるでしょう。
例えば、後に紹介する「VR不動産」や「VRショッピング」など実際に現地に行って体感しなければわからないということも、VRを利用することによって簡単に体験の提供ができます。
感染拡大の現状では、遠隔地へ移動することが困難な状況です。ですが、VRを利用することによって、様々なことが遠隔地からできるようになります。
後に紹介する、「VR医療」では遠隔地からの治療が可能になっている事例、「VR旅行・観光」では家にいながら遠隔地へ旅行をするような体験が可能に。
これだけでは留まらず、VRをビジネス分野に導入することで、様々なことが遠隔地からできるようになります。
従来の自動車の設計などは、設計図を書き、実際に製造して再検討を繰り返すということが普通でした。また、自動車の購入を考えている人は自分の好みのカラーが店頭にない場合は写真でしか見ることができない現状でした
ですが、VRを利用することで、ある程度立体的に完成像を構築することが可能になり、色も自由にVR空間上でカスタマイズすることが可能になります。これにより、デザイン・開発が時間・コストの面でも効率的になることが期待できます。
ここからは、「医療」「旅行」「スポーツ」「自動車」「不動産」など、ビジネスの多数の分野に渡って、どのようにVRが活用されているのかを詳しく紹介していきます。
これからVRを自社に導入しようと考えている方はぜひ参考にしてください。分野ごとに、さらに詳しく解説したサイトを明記していますので、そちらも参考にしてください。
医療分野においてもVRは活用されています。ここでご紹介するのは歯科医療機器のメーカー、モリタが挑む最新のMR活用例です。
歯医者がヘッドセットをつけて治療を行い、その画面に映し出された情報と、現実の映像を利用しながら治療できるMRが開発されました。
映像からもわかるとおり、ジェスチャーによってメニューを選択したりARで映し出される器具を掴むことができます。今まででは考えられないような革新的な技術ですね!
参考:
【VR医療】10選!VRを使った最先端の医療事例や技術をご紹介します!
FIRST AIRLINESでは、都内にいながらVR、食事などを通じて海外旅行気分が味わうことができます。
ハワイ、パリ、ローマ、ニューヨーク、ヘルシンキの5都市およびタイムスリップから行先を選択し、およそ110分のフライト時間中にVR体験、機内食、現地の人との中継動画などを通じて仮想旅行体験をすることができます。
シートは実際のファーストクラスの機内で使用されていた座席を使用し、ファーストクラスで勤務していたクルーが監修したクルー候補生がサービス提供しています。
同様にANAも、提供されている旅行をVRで疑似体験できるサービス「ANA Virtual Trip」を展開しており、VRそのものが旅を代替してしまう日もそう遠くないかもしれません。
参考:
【VR旅行】観光・旅行ビジネスのVR活用事例6選をご紹介!
VRは、スポーツの分野にも及んできています。昨年から、プロ野球チームの東北楽天ゴールデンイーグルスを運営する株式会社楽天野球団が、VR技術を用いたプロ野球選手のトレーニングシステムを導入しました。
このシステムはNTTデータと共同で開発され、選手の過去の投球内容をVRで再現して仮想体験することができます。
プロのスポーツチームが保有するデータとの連携で、実用化した技術としては世界初のものです。いまやVRはプロのチームの練習まで領域を広げてきているのです。
参考:
【VRスポーツ】最新事例7選VRでスポーツ・トレーニングを体験!
アウディは、今年の2月から3月にかけてAudi VR ExperienceというVRを使った新型車のプロモーションを行いました。ハイエンドVRデバイスであるHTC Viveを用いた、本格的なVR体験が提供されていたことが特徴。
キャンペーン参加者は、VRゴーグルを装着することで運転席に座っているような体験ができるほか、車の周囲を歩き回って車の外観を360°楽しむこともできたそうです。
ステアリングに顔を近づけると内部のパーツの構造が透けて見えるようになるなど、VRならではの体験もあったようで、非常に考えられたコンテンツだったといえるでしょう。また、Viveでの展示と同時に、Google Cardboardを用いた360度動画の展示も行われていました。
360度動画を使った試乗コンテンツは、制作が手軽なこともあって(360°カメラで撮影するのみ)多くのメーカーが公開していますが、このように3Dモデルを作り込んでクオリティの高いVRコンテンツを提供している例はあまりありません。
また、アウディのFacebook公式ページには、このようにインテリアを360度写真で楽しめる投稿が頻繁に行われています。画質はいまいちですが、車内の雰囲気を掴むことはできますね。
更に、YouTubeのアウディ公式チャンネルには、R8の助手席に乗ってサーキット走行を体験できる360度動画なども投稿されています。こちらは4K画質で撮影されており、非常に高クオリティな映像です。
メルセデスベンツは、代官山と大阪の蔦屋書店でVRを活用したバーチャルショールームを設置しました。期間限定だったので、現在は見ることはできませんが、蔦屋書店の中に専用のスペースを作り、Gear VRなどの機材を置いて、専門のスタッフも配置して、自動車の外観や内装を見れるようにしました。
ジャガーはスポンサーをつとめるテニスの全英オープンに関連して“Feel Wimbledon”というVR動画コンテンツを作成し、ロンドンの地下鉄の駅やショールームでカードボードを配布する大規模なキャンペーンを行ったほか、日本での販売においても360度動画を活用した試乗コンテンツを作成するなどしています。
トヨタ自動車は国内での販売ではVR関係のニュースはあまり耳にしませんが、米国でのマーケティングではVRを活用しているようです。
昨年は米国での新型プリウスのプロモーションに360度動画を活用したほか、2015年のデトロイトモーターショーでOculus Riftを使用した安全運転のシミュレーターを発表したのに続き、昨年9月にサンフランシスコで開催されたTechcrunch Disruptでは、新車種Prius PrimeにHTC Viveを積み込んで、カーチェイスなどを楽しめるVRコンテンツを発表するなど、見本市でもVRを活用した取り組みを発表してきています。
参考:【VR自動車】VR技術が活用される自動車業界の事例5選
VRは、教育の場面においても、子供たちの関心や興味を引き、理解を深めるためのツールとして話題になっています。ここでご紹介するのはBronx Latin Schoolの例です。
ここでの授業では、Google Expeditionsというバーチャル校外学習サービスを利用しています。
現在無料で提供され、端末へダウンロードすれば、教室の中なのに世界中の様々な場所へ行くことができます。動画を見るとわかるようにVRは子供たちの関心を一気に集めることができます。
参考:
【VR教育】VRを用いた教育の事例とメリット・デメリット
三菱地所は、都内18カ所の住宅展示場のモデルハウスをVR化し、展示場に来場した顧客向けにVR体験をしてもらう営業ツールを導入しています。
また、都内の会員向けラウンジにて、京都の新築マンションのVRモデルルームを閲覧できる設備を整えたほか、オフィスビルの賃貸営業においてもVRを営業ツールとして導入しています。デバイスとしては、GearVRを使用しています。
大和ハウス、大京、コスモスイニシアが共同で沖縄に開発したマンションの販売では、マンションのモデルルームだけではなく、現地の住環境もVR化したものを、都内の販売サロンで、営業ツールとして使用しています。
遠隔地の物件の場合は気軽に現地を見に行くことができないため、VRの利用価値は高いといえるでしょう。
リノベーション物件、デザイナーズ物件の賃貸情報プラットフォームのgoodroomは掲載物件のVR閲覧をできるようにしているほか、リノベーション物件を中心に取り扱うREISMや、千代田区の番町エリアの高級賃貸物件専門のRoom Concieも物件の内見にVRを活用しています。
リノベーション物件や高級物件は、個性的な物件や、こだわりの設備など、通常の物件にはない付加価値があるため、内見業務の効率化だけでなく、物件をうまくアピールするという観点からもVRは活用できるといえます。
また、VR対応はしていないものの、360度パノラマ静止画で不動産物件を紹介するのも多く見られます。
三井不動産グループは、VR対応ではないものの、戸建て住宅販売の三井ホームのウェブサイト上で「バーチャルモデルハウス」というメニューを作り、モデルハウスを360度のパノラマ静止画で閲覧できるようにしています。
また、不動産売買仲介の三井のリハウスでは、全国5000物件以上の土地建物物件を360度のパノラマ静止画で閲覧できるようにしています。
不動産情報プラットフォームのHome’sでは、東京だけでも数万件の賃貸物件を360度パノラマ画像で閲覧することができます。パノラマ画像のデータがあれば基本的にはVRコンテンツを作ることができるため、VR化するための素材をこれだけたくさん集めているのは強みであるといえるでしょう。
一方でこれだけ数が集まってくると、正直クオリティの低い画像も散見されるため、クオリティコントロールは課題になっているようです。
参考:
【VR不動産】VRの不動産における導入で内見がもっと便利に!活用事例7選やメリットも紹介
【VR不動産】VRで物件内見!不動産売買・賃貸でのVR導入方法・費用・事例も紹介
VRはショッピング界にも進出しています。
株式会社Psychic VR Labの提供する「STYLY」は、誰でも直感的にVR空間をデザインすることのできるVRプラットフォームです。
VRには多くの専門知識が必要とされると思われがちですが、STYLYを使えば0からでも簡単に動画のようなvr空間を作ることができます。
VRでのショッピングの展開には、低コストでかつほぼ無限大の売り場が構築できるため、注目されているのです。
参考:
VRショッピング事例10選 !知っていますか?未来の買い物のカタチ
VRを利用したサービスを提供する百貨店紹介!VRを百貨店に導入するメリット
家具業界では、家具と自分の部屋のマッチングやコーディネートを確かめるためのARが先に導入されてきています。
イケアが2013年からARを導入しているほか、島忠ホームズや大塚家具等の大手家具販売店も専用のアプリを出すなど、メジャーなものになってきています。
また、イケアは、昨年にはHTC Viveのゲームプラットフォームである、SteamでIKEA VR Experienceという、インテリアシミュレーターをリリースしています。こちらのシミュレーターでは、身長の設定も自由に変えられるようになっており、例えば、「子どもの目線ではどう見えるか」といったことも確かめることもできるようです。
JR東日本は皆さんご存知の鉄道会社ですが、ここではVRによる研修が導入されています。特に実際に研修で体験することが不可能な労災事故の再現を行い、疑似体験ができるようにした点が特徴的です。
JR東日本では従来、線路関係の工事担当スタッフに向けて車両に乗車し、運転手目線の体験研修を行ってきました。しかし、危険な状況を体験することはできず、危機感の欠如が問題となっていました。
そこでVRによって事故の現場を再現し、危機感をより持ちやすい形の研修にすることとなったようです。
※参考:積木製作、VRを活用した安全教育システムをJR東日本に納入
東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)は、新たな安全教育としてVR技術を活用した教材を導入しました。コンテンツは、鉄道の三大労災といわれる「触車」、「墜落」、「感電」のうち「触車」と「墜落」に関する4つの事故を再現し、2016年6月に設立したソフトバンクの「VR事業推進室」と合同で制作されました。視聴にはVR視聴機器(ヘッドマウント)にスマートフォンをセットし、スマートフォンのアプリからVRコンテンツを再生するため、機材さえあれば集合研修の必要がなく社員がそれぞれの職場で疑似体験ができます。
※出典:
Softbank公式サイト VR導入事例
参考:
30分で解説!360度カメラの選び方・撮影のポイントを1つの冊子にまとめました。資料ダウンロードは「5000事業者以上へのVR導入実績!事業者向け、360度カメラの選び方と効果的な撮影方法」よりお願いします。
以上のように、いろいろな業界でVRを活用しようという取り組みが見られてきています。
一方で、やや穿った見方をすると、VRが流行っているがゆえに、単純なプロモーション用のツールとして使われている側面も否めません。また、発展途上であるがゆえに、前述した通りコンテンツのクオリティコントロールも課題になっている部分もあります。
しかしながら、遠隔地の不動産の内見や、家具のシミュレーションのように、顧客にこれまでにはなかったサービスを提供できたり、研修など、本当に業務に活用される事例も出てきているのも事実です。
VRのビジネス活用はまだまだ始まったばかりの分野ですので、今後の技術の進歩によって、ますます活用が進んでいくのではないでしょうか。
参考リンク:
VRの活用例や活用方法についての記事一覧
VRのさまざまな活用例や活用方法について興味がある方はこちら
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