近年、様々な業界から注目されているVRは、教育や医療といった実用的な場面でも使われるようになってきています。医療などの繊細な技術が必要とされる場面でもVRが活用され始めました。
ただ、「VR×医療」と聞くと、多くの方は「どのようにVRが使われているのか?」「そもそもVRが医療に役立つのか?」などの疑問をもたれるかもしれません。
医療分野といっても、手術やリハビリ、医学の教育コンテンツなど、VRの活用方法は様々。VRの最新技術を医療に応用することで病気の治療にも役立ちます。
今回の記事では、医療分野におけるVRの活用事例を10選ご紹介します。医療現場でVRを活用するメリットについても紹介していくので、ぜひ本記事を参考に医療分野でのVR導入をご検討ください。
医療の現場にVRが導入されることにはたくさんのメリットがあるとされています。
それは
などなど。これから明らかになる部分も多いので、もっと使い道は増えるはずです。
VRを使うことで、いままで見えにくかった患者さんの患部が見やすくなったり、治療すべきところを示してくれることで、治療も簡単になります。
いままで医療者の勘に頼っていたことも、VRで視覚的に解析することで、医療者ならだれでも再現可能な技術に変えることができます。
また、患者さんへの説明にVRを用いることでビジュアルで説明ができるので、より簡単に説明ができるようになります。詳しいことがわからなくても、画像や動画で見ることができればわかりやすいですよね。VRを使うことで患者と医療者がともに納得して治療に向かうことができます!患者さんの心理的な負担も軽くすることができますね。
さらに、VRは医学教育の現場でも大いに役立つことが予想されています。いままでは平面のイラストでしか見ることのできなかった体の内部を、立体感をもって見ることができたらわかりやすいですよね!手術もVRで体験できる日も近いでしょう。
この記事では、治療やリハビリのためのVRだけでなく、長期入院している子どもたちのためのVRまでご紹介しています!
あなたの知らないVRの活用例があるはずです!ぜひいろいろチェックしてみてください。
またそれぞれの解説の下には、会社やメーカーなどのURLリンクを乗せています。詳しく知りたい方は参照してみてください。
まずは歯科医療機器のメーカー、モリタが挑む最新のMR活用例です。
歯医者さんはヘッドセットをつけて治療をします。画面に映し出された情報と、現実の映像を利用しながら治療できるMRを開発しました。
(MRやVR、ARについて詳しく知りたい方はコチラの記事を参照してください→「VR・AR・MRの違い!専門家であるスタートアップ企業がくわしく解説」)
動画内では、VRでメニュー画面などが映しだされ、ARで手に持っている器具も映し出されていることがわかります。まさにMRの良い点をフル活用していますね。
治療の際にVRでガイドを表示することで、歯医者さんの手助けになります。レントゲン写真なども其の場で見れるようになるので、より効果的な患者さんデータの活用が可能になります。
手を開いたり閉じたりすることで、メニュー画面を操作しています。(写真1枚目)
実際の治療をおこなうときも、ヘッドセットを通して治療できます。(写真2枚目)
MRを使ったモリタの新技術、とても革新的でしたね!
2つ目にご紹介するのは、富士通が開発した zSpace (ジースペース)です。
製品の紹介動画はコチラ!
zSpaceは、メガネのようなゴーグルをかけて、ディスプレイ上にVRを映し出すことができる製品です。
ディスプレイ上に映し出されたVRは、自由に動かしたり向きを変えたりすることができます。専用のペンを使うことで、より複雑な動きにも対応しています。
また、ゴーグルを利用することで視線を認知し、視線に合わせてVRが動いたり、と多種多様な動きに対応できるようになっています。
zSpaceは、オンラインショッピングなどの個人利用や、会社などの研修活動、さらにはVRを用いた教育活動にまで利用できます。
すでに医療教育の現場にも導入され効果を上げているんです!!
そしてメガネのようなゴーグルなので、いままでのVRヘッドセットより軽そうでいいですよね。
ディスプレイとゴーグルを分けるというのは、利用者の負担(ヘッドセットは長くつけていると重くて疲れますよね)を軽くするためにも、現実的かもしれません。
医療分野や医療に限らず、今後の応用に期待が膨らみますね!
VRをもちいて歩行訓練をおこなう試みがアメリカのデューク大学で行われています。
歩行訓練の対象となるのは、脊髄損傷により自力歩行のできない患者さんです。
歩行訓練は、VRでヴァーチャルの歩行画面(自分の足元を映したもの)を見ながら、その時に生じる脳波をもちいて歩行をするというものです。
動画内では、少しずつですが、訓練を重ねた患者さんが歩けるようになる様子がわかります。
この時は、訓練を続けた患者さん全員が足先の感覚や、運動能力を実感したということです!驚きますね。
この驚くべき実験結果によって、VRが医療において十分に役立つこと、またほかの機器と合わせて使うことで、より難しい病気の治療にも使える可能性を示しました。
30分で解説!360度カメラの選び方・撮影のポイントを1つの冊子にまとめました。資料ダウンロードは「5000事業者以上へのVR導入実績!事業者向け、360度カメラの選び方と効果的な撮影方法」よりお願いします。
The Stanford Virtual Hearts(バーチャルハート) はVRでスタンフォード大学が開発した、心臓について学ぶための教育用VRコンテンツです。
VRによって心臓を3D映像にして、心臓の構造や働きについて学べます。
利用者は、手元のコントローラーを使って、心臓をいろいろな向きから見たり、パーツごとに分けてみたり、心臓の中に入ってみたり、と本当に自由でわかりやすい心臓の学習ができます!
このバーチャルハートはすでにスタンフォード大学で実際に使われていて、スタンフォード大学薬学部の生徒さんが勉強に役立てています。きれいでリアルなVRコンテンツなら、勉強もはかどりそうですね!
Airway EXはLevel Exという会社が出しているという医療教育アプリです。
医療教育アプリという言葉になじみのない方も多いかと思います。
簡単な説明をすると、実際の手術でおこる場面などを再現して、対応法や手術のやり方を学べるようにしたアプリケーションのことです。とくにLevel Exのアプリはゲームのようになっていて、誰でも体験することができます!
Level Exからは2種の医療系アプリがリリースされています。新たに2つのリリースも控えています。
現在リリースされ、ダウンロードできるのは”Airway Ex”と”Gastro Ex”だけですが、”Pulm Ex”と”Cardio Ex”のリリースも待ち遠しいですね!
誰でもダウンロードできるアプリなので、普段なら絶対に体験できない医療現場を、ゲーム感覚で体験してみるのも面白いかもしれません。
Farmooは、小児ガンなどの治療に長い年月がかかる病気をもつ子どもたちのために開発されたゲームです。
ゲームの内容は、Farmoooという名前の通り、VR世界の中で牧場(Farm) を運営するというものです。ゲームの中では、ニンジンを育てたり牛を飼ったり、小屋の中でまったりすることもできます!
とてもシンプルなつくりのゲームなのですが、牧場の中はとにかく広く、開放感にあふれています。
病院のベッドの上で長い時間をすごす子どもたちにとって、なかなか味わえない開放感をあじわえる良いゲームですね!
Farmoooはなぜ、長期入院している子どもたち向けに作られたのでしょうか?
その答えは開発者のヘンリー・ロー(Henry Lo)にあります。カナダのサイモンフレーザー大学の学生であるヘンリーは、幼いころにリンパ腫におかされ長い時間を病院のベッドの上で過ごしました。
病が完治したのち、彼は相棒のジャニス(彼女も免疫不全で病院に通っていました)と一緒に、ベッドの上で長い時間を過ごす子どものためのゲームを開発します。
こうして出来たのがFarmoooです。
ヘンリーとジャニスは、Farmoooが化学療法をうけている子どもたちの気を少しでも紛らわし、彼らの心のなかを感動で満たすことを願っています。
彼らの努力の結晶であるFarmoooを、たくさんの子どもたちが楽しめたらいいですね!
つづいてご紹介するのは”We Are Alfred”(ウィー・アー・アルフレッド)という変わった名前のVRコンテンツです。
We Are Alfredは名前も変わっていますが、コンセプトも斬新で面白いものになっています。
そのコンセプトとはズバリ「74才のおじいちゃんになること!」です。とくにお医者さんに74才の体を体感してもらうことで、医者と患者の相互の理解を深めることにつながりそうですね。
加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)などの視界の障害や、聴覚の障害などをリアルに体験でき、手の衰えなども忠実に再現されています。
VRを使って高齢者になりきることができれば、お医者さんお患者さんの距離も縮まり、より効果的な治療やリハビリのやり方が生み出されるかもしれませんね!
MindMazeは、脳卒中などのリハビリに応用が期待されているVRコンテンツです。
リハビリをうける患者さんは、画面を見ながら自分の腕や手、指先を動かす方法を習得していきます。
リハビリをうける患者さんの肘・手首・指先に装着されたセンサーで、患者さんの動きを把握します。画面上には様々なミッションが表示され、患者さんが次々にミッションをクリアしていきます。
ゲーム感覚でやれるので、つらいリハビリの負担が軽減されるかもしれません。
Iris Visionは、視力の低い人のためのメガネのような役割を果たすVRコンテンツです。
Iris Visionと一般的なメガネの違いは、Iris Visionは屋内でも屋外でも、状況に合わせて最適な視界を提供してくれるということです。
屋外では周囲の明るさや見るものによって視界を微調整します。また屋内では文字を読む際の、黒色と白色のコントラストを見やすく調整します。
メガネではできない細かな視界の調節が売りですね。もしかするとメガネの代わりにVR!という時代が来るかもしれません。
ゴーグル内の視野も広角70度あるので、安全であると制作会社は言っています。
下の写真左側がIris Visionの視界、右側がそのほかのVR製品の視界です。確かに広く見渡せますね!
しかしメガネの代わりにVR、という時代になるにはまだ少し早いかもしれません。まだVRゴーグルを屋外でつけることが、どれほど危険かはわかっていませんし、抵抗感を感じる人もまだまだ多いと思います。
それでも、いつかメガネがなくなりVRゴーグルをつける日が来るかも知れない!と考えるとわくわくしますね。
フロリオは自閉症の子どもたちのための、教育系VRコンテンツです。
子どもたちは、VRゴーグルをつけてコンテンツを見ることで学習を進めていきます。
上記の動画の中では、自閉症の子どもたちも興味津々でフロリオを見ていることがわかりますね。みんな楽しそうで熱心に学習に取り組んでいます。そんな子どもたちを見守る先生たちや、親御さんも笑顔になっていますね!VRがみんなを笑顔にしている、といえるかもしれませんね。
フロリオは、子どもたちが見ている画面と同じ画面を教育者の手元のタブレットで見ることができます。これにより、子どもたちと先生や親御さんのスムーズなコミュニケーションが可能になります。
また、子どもたちの学習状況やデータも記録されていますので、いつでも確認・分析できます。
フロリオは自閉症の子どもたちの学習におおいに役立ちそうですね!
医療分野でのVRは想像以上に進化していましたね!
本格的な手術のときにも利用されるVRや、教育で役立っているVR、ゲーム感覚で医療に触れられるVRなど、種類も様々でした。
入院中の子どもたちや自閉症の子どもたちが夢中になってVRをのぞきこんでいる様子は微笑ましかったですね。
私たちの生活にもかかわりが大きくなっているVRは、すでに医療現場に導入されていることがわかりました。これからもっともっとVRが活躍していくことが期待されます。
VRを活用することで病気や障害に対する新しい治療法が生まれてきています。今後、いままでよりレベルの高い治療や、遠隔の治療なども夢の話ではなくなるかもしれません。
VRの医療分野への進出におおいに期待しましょう!