VRと空間データ活用のヒントが見つかる

【VRと安全教育】危険な事故・労働災害を体感できるVR制作サービス9選

労働災害を防止する様々な取り組みが近年行われています。

中でも今注目を集めているのが「VR技術の活用」です。
厚生労働省から出されている第13次(2018年度~2022年度)労働災害防止計画の中でも「VR技術を応用した危険感受性を高めるための教育の推進」が推奨されています。

従来の安全教育は座学で学ぶのが一般的でした。

ただ座学を通して頭で理解しても、体感として身につかず、実際の労働現場に戻ると忘れてしまいます。知識として理解しても中々労働現場で行動に移すことができず、学習効果が低いという課題がありました。

そこで、労働災害を疑似体験できるVRが注目されています。

VRを通して労働災害を「自分ごととして」体験することで、労働現場に潜む危険に対して注意を向けるようになり、労働災害の抑制ができます。

本記事ではVRを活用した安全教育のメリット・デメリットをはじめ、導入時の選択肢と費用、そして安全教育分野のVRサービスの詳細・費用をご紹介していきます。

これから、安全教育にVR導入を検討されている方の参考になれば幸いです。

※VRの活用は安全教育分野以外にも広がっています。サービス業の繁忙期の接客対応やゲーム感覚で業務の進め方を学べる研修など、業界や業態を問わず広く活用されています。詳細はこちらの『コロナ禍の人材育成に活かされる「VR研修」の押さえておくべき基礎知識まとめ』と『【VR研修9選】4つの最新研修事例と5つの研修提供会社をご紹介!』も併せてご確認ください。

VR安全研修を低価格で運用する方法とは?
〜 現場の危険や災害を「自分事」にする秘訣をご紹介します!~

2023年2月に行われた、VR安全研修に関する基礎知識をご紹介するオンラインセミナー。現在、オンデマンドで動画をご視聴いただくことができます。

ご視聴はこちらから。ぜひ、今後の安全研修・安全教育にお役立てください。

 

 

VRを活用した安全教育のメリット

まずは安全教育のVR活用のメリットをご紹介していきます。

1. 実際の事故の擬似体験を通して、高い学習効果を得られる

VRの最大のメリットは実際の事故の擬似体験ができることです。

例えば、高所作業中の、はさまれ巻き込まれ、感電等の体験は現実の研修では危険が伴うため実施できません。

そのため重大事故の研修に関しては、これまで座学でカバーしてきました。しかし、座学だとどうしても学習効果が低く、定着しないという課題がありました。

VRを活用して重大事故を体験することで、身になる安全教育をすることができます。
怖い」と思うような「VRコンテンツへの心理的結びつきは講義形式の3.75倍」あると言われています。(参考:PwC – How virtual reality is redefining soft skills training”


※アクティオの安全教育VR動画

重大事故につながるシチュエーションをVRで体験しておくことで、事故防止の意識向上が期待できます。

 

2. いつでもどこでも研修を受けることができ、反復もできる

2つ目のメリットは場所や時間を選ばず研修を受けらることができ、反復もできることです。

研修コンテンツとVRセットを用意できれば、研修会場や安全道場に集まる必要はありません。また日中、もしくは夜間にしか実施できない研修も昼夜問わず行うことができます。

VRセットが用意できない場合は、スマートフォンやパソコンを使って閲覧・体験することも可能です。VRセットを利用した方が学習効果が高いのはもちろんですが、大勢の研修で人数分のVRセットが用意できない場合などは、スマートフォンやパソコンで一時的に代替することもできます。

また、一度、安全研修のVRコンテンツを作れば、何度でも閲覧ができ、繰り返し学習ができます。危険な場面を実地で再現することは特に難しいものです。
このため、臨場感ある研修をVRで反復学習できることは安全教育の場合は特に効果的なメリットです。
反復練習を通して記憶に残り、学習効果の定着が望めます。

 

3. 「自分ごと」として事故体験ができる

3つ目のメリットとしては「他人ごと」ではなく、「自分ごと」として事故の体験が可能になることです。

「本人視点」で360度を見渡すことができるので、まるで自分がその事故を体験しているような感覚を得られます。
通常の動画では表現しにくい「本人視点」や「死角」を360度の空間で表現することで、より現場に近い体験が可能になります。

 

VRを活用した安全教育のデメリット

次に、デメリットについても見ていきます。

1. 大人数で実施するには工夫が必要

1つめのデメリットは、一度で大人数で実施するには工夫が必要という点です。

一度に大人数で研修を行う場合は大量のVRゴーグルが必要になります。ただし、人数が多いと購入費用がどうしても高くなります。
そのため、実際の運用では4~5人のグループに対してVRゴーグル1台を渡して、グループ内で回しながら運用するケースが多いです。スマートフォンやパソコンなどのデバイスも併用して研修をしています。

 

2.複雑なコンテンツを作るのは慣れが必要

2つめのデメリットには、複雑なコンテンツを作ることの難しさがあげられます。

360度カメラは初心者でも簡単に操作できますが、スマートフォン等の通常のカメラとは撮影できる画角等が違うため、少し慣れが必要です。
そのため、自社で360度カメラの使い方等、0から全て調べて撮影・編集するのは少しハードルが高くなります。

これから初めてVRコンテンツを作るという場合は、安全教育の研修コンテンツ制作実績を持つVRサービス会社と相談しながら進めていくことをおすすめします。(※安全教育のVR制作会社については本記事後半にてご紹介しております)

 

既製品 (レンタル・買取) vs. オリジナル制作

安全教育の研修用VRコンテンツを作成する上で、内容がある程度一般的な場合は、すでにパッケージ化されている製品を購入、もしくはレンタルすることも選択肢の一つです。既製品を購入・レンタルすることで製作費を大幅にカットすることができます。

既製品で網羅されている汎用的な内容には以下のようなものがあります。

【既製品でカバーされている作業例】
・足場や梯子などの高所作業、 溶接作業
・フォークリフトの積載、荷下ろし作業
・道路舗装作業

【既製品でカバーされている事故例】
・高所からの墜落・転落事故
・感電事故
・火事
・重機との接触、巻き込み、巻き込まれ
・交通事故

それでは具体的に既製品とオリジナルで、どの程度納期・費用に差が出るか、以下で見ていきたいと思います。

納期 費用
既製品(レンタル・買取) 一般的に短納期。申し込みから数週間で利用が可能。 レンタル:数万円~数十万円

買取:数十万円

オリジナルコンテンツ制作 コンテンツの内容により様々。数ヶ月~年数を要するものもある。 90万円~1,000万円程度

 

既製品をレンタルまたは購入する場合、コンテンツがすでに完成しているため比較的短納期です。一般的には申し込みから数週間で利用開始することができます。費用はレンタルの場合で数万円から数十万円、買取の場合は数十万が一般的な相場となっています。

いっぽうオリジナルコンテンツの制作を依頼する場合は、制作期間に時間がかかるため、数か月から場合によってはそれ以上かかります。また、具体的な費用に関しては、各社ウェブサイト上で明記されているところは少ないものの、一般的な相場は90万円~1,000万円程度です。

また、上記の費用に加えてVR機材や視聴デバイス等の購入も必要になります。

以上より、費用を抑えたい場合は可能な限り既製品を活用しつつ、既製品でカバーできない範囲のみオリジナル制作を検討されることをおすすめします。

自社オリジナル制作VRサービスの比較

オリジナルコンテンツを制作したいがコストはかけたくないという場合、VRのクラウドソフトウェアの利用がおすすめです。自社で制作や編集を行うことができ、低コスト・短納期で自社オリジナルコンテンツの制作ができます。


 

安全教育のVRサービス9社の費用とサービス内容を徹底比較

ここまで、VRを活用した安全教育の概要やメリット・デメリットについて見てきました。

ここからは安全教育のVRサービスを提供している会社を9社紹介します。

各会社のパッケージ内容例やオリジナルコンテンツ制作サービスの有無・費用などを参考の上、自社のニーズにあったサービス会社を探してみてください。

1. スペースリー

VR制作編集のクラウドソフトを提供する株式会社スペースリー。2016年11月にサービス提供を開始して以来、不動産や住宅分野を中心に4,000社以上への実績があります。業界初の自社管理運用が可能なクラウドソフトは、リーズナブルな価格と直感的な操作で高品質のVRコンテンツを制作・編集・管理、活用まで一括して行えるのが特長。VRゴーグルだけでなく、スマホ・PC・タブレットなど様々なデバイスにも対応しています。
サポート体制も充実しています。クボタ・フジテック・大同メタル・小糸製作所他、製造業の会社様に多く導入実績あり。

会社名 株式会社スペースリー
パッケージ商品購入オプション なし
レンタルの有無 + 費用 なし
パッケージ内容例 (過去のオリジナルコンテンツ制作例)
・脚立作業落下体験
・工場や現場の危険予知トレーニング
・安全道場のバーチャル化
オリジナルコンテンツ制作サービスの有無 + 費用 あり
月額5万円~(税抜)
*内容によって最適なプランにカスタマイズ
住所 東京都渋谷区渋谷3-6-2 第二矢木ビル3F A室
サービスURL https://lp.spacely.co.jp/training_vr

 

2. 明電システムソリューション

数多くのコンテンツを取り揃えている明電システムソリューション株式会社。

オリジナルコンテンツの制作も承っており、既存コンテンツの背景や制服をオリジナルのものに変更することができます。コンテンツはレンタルや購入のほか、初期費用を抑えられるサブスクリプションサービスにも対応。定期的に安全教育を行いたい方にも適しています。

会社名 明電システムソリューション株式会社
パッケージ商品購入オプション あり
・費用等詳細は要問合せ
レンタルの有無 + 費用 あり
・初期費用5,500円
・安全体感レンタル(1週間)55,000円
・安全体感レンタル(4週間)220,000円
パッケージ内容例 ・移動ハシゴからの墜落
・溶接作業での火災
・電動工具での感電
・高所からの工具落下
・フォークリフトの転覆
オリジナルコンテンツ制作サービスの有無 + 費用 あり
・費用等詳細は要問合せ
住所 静岡県沼津市東間門字上中溝515(明電舎沼津事業所内)
サービスURL https://www.meidensha.co.jp/mss/system/sys_07/sys_07_01/index.html

 

3. ミドリ安全

ミドリ安全株式会社では、VRを活用した教育ツール「RiMM」を標準品として販売しています。

多数のコンテンツが用意されており、職種の事故事例に合わせてカスタマイズしたシナリオの制作も対応可能です。

会社名 ミドリ安全株式会社
パッケージ商品購入オプション あり
・費用等詳細は要問合せ
レンタルの有無 + 費用 不明
パッケージ内容例 ・墜落・転落
・感電事故
・ベルトコンベア挟まれ
・フォークリフト事故
・交通事故
オリジナルコンテンツ制作サービスの有無 + 費用 あり
・費用等詳細は要問合せ
住所 東京都渋谷区広尾5-4-3
サービスURL https://midori-sh.jp/vr/

 

4. NTT テクノロス

NTTテクノロス株式会社では「VR安全意識向上サービス」の名称で危険事故を体感できる安全教育を提供しています。

コンテンツは数多い事故の型から汎用性の高いものを中心にラインナップ。研修担当者の負担を軽減してくれる具体的マニュアルや、研修で利用できる説明パネル素材なども用意されています。

会社名 NTTテクノロス株式会社
パッケージ商品購入オプション あり
・費用等詳細は要問合せ
レンタルの有無 + 費用 不明
パッケージ内容例 ・バケット車作業【転落】体感コンテンツ
・電柱荷荷下ろし【激突】体感コンテンツ
・土砂掘削作業【崩壊】体感コンテンツ
・鉄塔高所作業【転落】体感コンテンツ
・台車荷下ろし作業【転倒】体感コンテンツ
オリジナルコンテンツ制作サービスの有無 + 費用 不明
住所 東京都港区芝浦3-4-1 グランパークタワー 15階
サービスURL https://www.ntt-tx.co.jp/products/vr-anzen/

 

5. アクトエンジニアリング

株式会社アクトエンジニアリングが提供しているVR安全教育のコンテンツは「目撃型VR」と「行動型VR」に分かれています。

事故を疑似体験するのではなく、「事故現場に遭遇したかのような感覚」を体験できるのが「目撃型VR」。VR空間の中を実際に動きながら事故・災害現場を体感したり、工具を扱って作業手順の指導を受けたりする事ができるのが「体験型VR」です。

どちらのタイプもオリジナルコンテンツの制作サービスを承っています。

会社名 株式会社アクトエンジニアリング
パッケージ商品購入オプション あり
【行動型VR】
・1コンテンツ1IDに付き:20万円(税別)/6か月、以降更新3万円(税別)/1か月、30万円(税別)/12か月【目撃型VR】
・要問い合わせ
レンタルの有無 + 費用 不明
パッケージ内容例 ・目撃型:ダンプとの激突シーンを目撃
・行動型:足場(ステージ)からの墜落体験
・行動型:サンダーの反発(サンダー操作体験)
オリジナルコンテンツ制作サービスの有無 + 費用 あり
【目撃型VR】
・データ転用による360度VR映像化(当社で制作した事故・災害アニメーションの360度化が前提):1事例あたり30万円(税別)~
・これまでアニメーションの制作がなく、新規依頼での360度VR映像制作:1事例あたり90万円~160万円(税別)程度
・スマートデバイス用アプリ開発:要相談【行動型VR】
・ソフトウェア1本あたりの開発費:150万円~350万円(税別)程度
住所 東京都港区赤坂3-8-15 THE AKASAKA 4F
サービスURL https://www.acte.co.jp/contents/virtual.html

 

6. 積木制作

180社を超える導入実績を持つ株式会社積木制作では、汎用性の高いコンテンツを多数揃えています。

コンテンツは英語、中国語等の多言語に対応しているため、海外支店での導入研修にも最適。定額(サブスクリプション)、買い取り、レンタルと3種の販売形態があり、ニーズに合った導入が可能です。

 

会社名 株式会社積木制作
パッケージ商品購入オプション あり
・27.5万円~71.5万円
レンタルの有無 + 費用 あり
・1台38,500円(税込)機材込の費用
パッケージ内容例 ・車両基地構内における危険体験
・建設現場における重機災害体験
・橋梁足場における危険体験
・盤内配線作業中の感電
・歩行中・自転車運転中・運搬作業中の災害体験
オリジナルコンテンツ制作サービスの有無 + 費用 なし
住所 東京都墨田区江東橋2-14-7錦糸町サンライズビル9F
サービスURL http://tsumikiseisaku.com/safetyvr/

 

7. アクティオ

建機レンタルを手がける株式会社アクティオのVRシステム「Safety Training System VR of AKTIO」の特色は、高画質5K解像度のスーパーリアル映像。落下物が実際に落下するスピードや事故の際実際に転倒する角度やスピードなど、実験や検証を行ったものを映像化しています。

リアリティのある映像を通して安全教育を学ぶことができ、危険防止への意識を高められます。

会社名 株式会社アクティオ
パッケージ商品購入オプション 不明
レンタルの有無 + 費用 ・VR機材「Safety Training System VR of AKTIO」のレンタル
・費用等詳細は要問合せ
パッケージ内容例 ・高所作業車編(高所作業車からの転倒、転落、挟まれ事故など)
・バックホー編(転倒、衝突など)
オリジナルコンテンツ制作サービスの有無 + 費用 不明
住所 東京都中央区日本橋3-12-2 朝日ビルヂング7階
サービスURL https://www.aktio.co.jp/museum/safe-secure/sts_vr.html

 

8. NECソリューションイノベータ

VRソリューションの開発を手がけるNECソリューションイノベータ株式会社では、企業のニーズに合ったVR安全教育のコンテンツ制作を支援しています。

VRで実施したトレーニングをビッグデータとして解析して、問題点を可視化できるのが特徴です。

また、日常で体験することが難しい災害現場をVR技術で再現した「NEC VR現場体感訓練システム for 防災」も手がけています。

会社名 NECソリューションイノベータ株式会社
パッケージ商品購入オプション 不明
レンタルの有無 + 費用 不明
パッケージ内容例 ・転倒・転落、やけど、挟まれといった危険認知
・火災現場の訓練
オリジナルコンテンツ制作サービスの有無 + 費用 あり
・費用等詳細は要問合せ
住所 東京都江東区新木場一丁目18番7号
サービスURL https://www.nec-solutioninnovators.co.jp/sl/vr/anzen/index.html?

 

9. BeRise

広島県に本社を置く株式会社ビーライズが制作する「VR安全シミュレータ」は、広島市産業振興センターの新成長ビジネス事業化支援事業を活用して事業化されました。

コンテンツには「フォークリフト編」があり、「工事現場編」・「交通事故編」についても順次リリース予定です。

会社名 株式会社ビーライズ
パッケージ商品購入オプション あり
・費用等詳細は要問合せ
レンタルの有無 + 費用 不明
パッケージ内容例 ・フォークリフトでの接触事故
オリジナルコンテンツ制作サービスの有無 + 費用 不明
住所 広島県広島市中区舟入町2-20 三栄広島ビル2F
サービスURL https://www.berise.co.jp/

 

まとめ

今回は「VRを活用した安全教育」の概要やメリット・デメリット、VRコンテンツ利用の選択肢、そして安全教育のVRサービスを提供している16社の特徴や費用感を紹介しました。

冒頭でご紹介した通り、労働災害は年々増加しており、労働災害を防止する様々な取り組みが行われている中「VR技術の活用」が注目を集めています。

労働災害を疑似体験できるVRサービスを提供している会社は多くありますが、会社オリジナルのコンテンツを制作したいと考えている方は、実績があり、導入しやすいサービスを提供している会社を選ぶことをおすすめします。

本記事が、VRを活用した安全教育の導入を検討する際のお役に立ちましたら幸いです。

安全教育以外でのVRの研修の事例にご興味のある方はこちらの「研修 x VR活用」記事一覧も併せてご確認ください。

SNSでフォローする