VR運転シミュレーターは「ただの運転シミュレーター」ではありません。
自動車業界においてVRが導入されているのは、ドライバーの運転訓練や自動車の研究開発といった場面が中心。
座席シート付きのシミュレーターであれば、映画館の4DXのようなリアリティのある運転体験が可能に。
VRのソフトウェアによっては、上空から自動車を見下ろしたり、車体の周囲や内装をチェックしたりもできます。
今回は、VR運転シミュレーターを採用している分野を、導入メリットも合わせてご紹介します。
記事の後半では、代表的なVR運転シミュレーターを特徴と合わせてご紹介。
VR運転シミュレーターに興味のある方は、ぜひご一読ください。
運転シミュレーターと一口に言っても、活用されているのは新人ドライバー向けのVRコンテンツだけではありません。
自動車関係の会社でも、あらゆる業務でVR運転シミュレーターが導入されています。
ここでは大きく4つの分野に分けたうえで、その分野でのVR導入がどのようなメリットを生み出しているのかをご紹介します。
VR運転シミュレーターの採用により、従来の試乗方法では体験できない、自動車の先進的な機能すべてを体験できます。
日本国内では、店舗での体験がほとんど。
しかし、海外では「自宅から試乗できる」VR運転シミュレーターを導入している企業もあります。
最大のメリットは、自動車の機能を隅々まで体験できることです。
実際の試乗では高速道路を走れませんが、VR運転シミュレーターで再現することで高速道路での走行体験が可能に。
たとえば、VR試乗を導入している大手メーカーのスバルでは、以下のような機能をVR運転シミュレーターで体験できます。
店舗でVR試乗を体験する際には、販売スタッフも同乗します。
乗車した全員でVR運転シミュレーターの映像を鑑賞しながら、それに合わせて販売スタッフが機能や仕様について詳しく説明。
従来の試乗よりも安全で、リラックスしながら搭載機能を詳しく把握できるため、購買意欲の向上につながります。
車両開発の分野においても、VR運転シミュレーターを採用。
新たな安全機能の開発や、自動車の仕様を検討する際にVRが導入されています。
車両を作り始める前に、開発に関する情報共有や細かいデザインの指摘、提案などが可能です。
パナソニックグループのオートモーティブ社が、車両開発における検証用シミュレーターを開発。
デジタル化することによりコストを削減し、自動車開発の効率化を図っています。
VRを活用した自動車開発の詳しい記事はこちら↓
VR技術が活用される自動車業界の事例5選!これからのドライブはどう変わる?
従来は実際の走行でテストを行っていましたが、VRであればテストの日時や場所などを選ぶ必要がありません。
加 えて、車両を作る際の開発費や紙の仕様書といったコストを削減できます。
車両の機能や車内仕様を決める際に「実際のシートに座って操作しているかのような」テストを可能にするのがVR空間。
開発にかかる時間も削減されるため、効率的な車両開発が可能です。
自動車学校や教習所では、VR運転シミュレーターを「模擬運転装置」と呼ぶこともあります。
実際に活用されているのは、以下のような場面。
VR運転シミュレーターならば、実際の街並みや教習コースを再現したVR映像で、現実に近い運転練習ができます。
中でも、GSCの「VRモーションシート」は、地形に応じてシートが動くというリアリティの高さ。
悪天候の交通状況にも対応しており、さまざまな車種での体験も可能です。
他にも、事故が起きる可能性が高いシチュエーションを体験できるVRコンテンツがあります。
危険性のある状況を、一切のリスクなしで体験できるのもVR空間ならでは。
運転訓練と同時に、ドライバーの交通安全に対する意識向上も見込めます。
技能教習の受講回数は限られているため、人によっては練習不足となる可能性も大いにあり得ます。
そのため、VR運転シミュレーターを導入するメリットは非常に大きいです。
慣れないうちの運転は、緊張や焦りが原因で視野が狭くなりがちです。
VR運転シミュレーターはVRゴーグルを装着して行うため、運転中に注意すべき場所に目を向ける練習が可能に。
教習の前後にVR運転シミュレーターを取り入れることで予習や復習ができ、「縦列駐車」や「方向転換」といった難易度の高い技術も習得しやすくなります。
検定に落ちる要因のひとつである「S字カーブ」や「クランク」における脱輪も同様です。
VR運転シミュレーターならば危険性がないため、受講者は安心して苦手分野の練習ができます。
さらに、受講者の運転技術をデータやスコアとして見ることができるため、苦手な部分を把握しやすく、検定の合格率向上にも貢献。
何度も教習を受けなければならないという受講者の負担軽減はもちろん、インストラクターの負担や教習車のメンテナンスなどにかかるコストの削減も見込めます。
加えて、VR運転シミュレーターの導入は話題性があるため、自動車学校や教習所のPRとしても活用できるでしょう。
VRを活用した教習所の詳しい記事はこちら↓
VRを活用している教習所の事例紹介!教習所向けVRサービスの特徴も詳しく解説
運送会社では、主に新人のトラック運転手が研修するツールとしてVR運転シミュレーターが活用されています。
コロナの影響で、運送業界は多忙を極めている現状。
そのような状況下でトラックによる事故を防ぐため、研修にVR運転シミュレーターを導入する運送会社が増えつつあります。
トラック運転時の危険性をあらかじめ理解しておくことは、運転手の安全意識向上につながります。
雪などの悪天候や危険運転といった事故率の高い状況を、VR運転シミュレーターでリアルに体験。
安全運転に必要な技術や注意点について、従来の研修方法よりもひときわ理解しやすくなります。
さらに、VR運転シミュレーターを採用することで、運送会社の人件費や研修にかかる時間といったコストの削減も可能です。
VRを活用したトラック運転手の研修についての詳しい記事はこちら↓
UPSがVRでドライバーを育成。その研修内容とメリットを解説!
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ここからは、リアリティのある運転体験を可能にしているVR運転シミュレーターを、5つご紹介。
それぞれの特徴を踏まえながら、詳しくお伝えします。
引用元:ネッツトヨタ西日本
「2軸モデルVRシミュレーター」は、VRゴーグルの装着に加えて、座席シートで車両の動きを再現。
リアリティのある映像と挙動によって重力加速度を体感し、まるで実際に運転しているかのような体験が可能です。
VRシミュレーターで体験できる事故防止のための安全技術は、以下の4つ。
実際の運転では滅多に体験できないものばかりです。
運転体験だけでなく、VRゴーグルを外さずにシートを降りることで、VR空間にある自動車のデザインを外側から眺めることもできます。
VRシミュレーターを設置しているのは、福岡県内の6店舗(板付本店、新宮店、小田部店、百年パーク店、甘木インター店、大牟田店)です。
引用元:株式会社ビーライズ
株式会社ビーライズが提供しているVRドライビングスクールでは、「S字カーブ」や「クランク」といった教習内容を練習できます。
VRを採用しているため、ゲーム感覚で誰でも操作することが可能。
苦手意識のある人も効率よく練習ができるよう、以下のようなアシスト機能を搭載しています。
車体を透明化することで前輪の位置をしっかりと把握できるため、難しいコースでの運転感覚を養うことが可能。
リプレイ映像として自分の運転を客観的に見られるため、注意すべきポイントを発見し、次の練習に生かすことができます。
導入の際には、VR機器と対応PC、そしてハンドル型のコントローラーが必要です。
座席シートは必要ないため、省スペースで設置できるという点が魅力的。
広島にある本社と東京支社では、VRドライビングスクールの体験が可能です。
引用元:株式会社ハシラス
株式会社ハシラスが開発したVR運転シミュレーターは、座席シートの挙動が従来よりも格段に進化。
前後の移動や軸旋回移動が可能なため、実際の車体や座席シートの再現度がきわめて高いのが特徴です。
以上のような運転感覚をリアルに体感し、VRの没入感を増すことに成功しています。
運転時の天候や交通量の設定、さまざまなシチュエーションでの運転体験も可能。
ハンドルやペダルだけでなく、シフトレバーも搭載。
限りなく現実に近い運転体験を提供しています。
専用ソフトウェアの開発にも対応しているため、ドライバーの安全運転教習や研究開発など、幅広い分野で利用可能です。
画像引用:シティ・カードライビング
Forward Developmentが開発したゲームで、Steamにて販売されています。
シミュレーションゲームの中でもきわめてリアリティが高く、発売当初は世界中で話題を呼びました。
オープンワールドの世界で、基本的な運転技術を楽しく身に付けることができます。
ゲーム内では、複雑に交じり合った道路や数々の道路標識が登場。
交通量の多い場所も存在するため、単なるレースゲームとは違った難しさがあります。
対応するVRゴーグルとPC、ゲームパッドもしくはキーボード・マウスさえあれば、誰でも気軽に体験可能。
レビューの評価が非常に高く、人気のあるゲーム作品です。
引用元:Touch! PERSOL
パーソルR&D株式会社が手掛けている、トラック運転に特化したVR運転シミュレーター。
VR運転シミュレーター「T3R」を開発している、株式会社アイロックと共同で開発されました。
トラックの内装や風景、さまざまなシーンにおける交通状況、座席シートの揺れやハンドルを握る感覚までも細かく再現。
荷物を載せている時、載せていない時の走行感覚の違いにもこだわり抜いています。
トラック運転時の死角や車体の動きなどを確認できるため、ドライバーの安全運転に対する意識が向上。
訓練にかかる時間や費用といったコストの削減にも、大きく期待できます。
VR運転シミュレーターは、自動車の運転訓練や研究開発といったシーンにおいて大いに活躍しています。
開発されている筐体やソフトウェアには、それぞれ異なる特徴があります。
提供元によっては、問い合わせることで導入前にお試し体験をすることも可能。
ぜひ導入したいという方は、採用したい分野や導入コストを吟味しながら、比較検討してみてください。