VRと空間データ活用のヒントが見つかる

VRを農業で活用している事例を紹介。活用法、メリットも解説。

最近よく聞く単語の一つである「VR」。VRとはバーチャルリアリティの略。様々なビジネスシーンで現在活用されています。

今回は農業の分野におけるVRのメリットや実際の導入事例について紹介します。

新規就農者の減少が課題となっている農業において、広報支援や体験イベントを中心にVRは導入されています。

VRを導入すれば、都会でも簡単に農業の体験ができますので、ぜひこの記事を参考にしながら農業分野でのVR導入を検討してみてください。

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農業におけるVRの活用方法

VR 農業

古くからある産業、農業。実際の農作業をVRに置き換えることはできませんが、それ以外の分野においてはVRの導入は非常に効果的であると言えます。昨今、課題となっている後継者問題などの解決にVRは非常に貢献します。

実際にどのように活用されているかをチェックしていきましょう。

農業におけるVRの活用方法1.農業への理解を広げる

農業においてVRを導入することで、実際の農業がどのように行われているかを普段は農業に従事していない一般の方にも理解してもらうことができます。農業の様子をVRにすることで、田植えの様子や稲刈りの様子などを実際にその場で体験しているかのように感じてもらうことが可能。また、農業に興味はあるけれど仕事が忙しくてなかなか始めることができないといった人へもVRを使って農業体験をしてもらうことで理解を深めることが可能です。

農業の後継者不足の問題に、VRを使って農業に興味を持ってもらうといった側面からアプローチをかけることが可能です。

また、学校教育としてもVRでの農業体験は有用です。特に都心部において、気軽に農業体験をすることは難しいもの。田んぼや畑を学校として所有しているとしても、規模が小さく実際の農業の様子とは大きくかけ離れています。そこでVRを活用することで、実際の農業の様子を学校教育として体感することができ、日本の農業の実情を身に沁みて理解することが可能です。

農業におけるVRの活用方法2.農作業での研修

VRを導入することで、農業で起こりうる作業中の事故を擬似体験できる研修を行うことができます。農業は他の産業と比較しても事故発生率が非常に高く、安全意識を高めることが非常に重要とされています。そういった中で、研修における啓発施策の一環として「体験することが重要な」事故をVRで体験しておくことで、事故の怖さをよりリアルに考えることができます。

単なる座学での安全研修を行うだけではイメージが持ちにくかったり、軽く捉えてしまったりとなかなか意識の向上につながらないもの。VRを用いてリアリティのある研修を行うことにより、事故に対する危機感を高く持たせることができ、結果的に事故の減少につながります。

また、VRの利点として後から研修の様子を見返せることも。後から研修中の映像を見返すことで、研修中には気づくことのできなかった、隠れた危険に気が付くきっかけになります。他にも研修に本当に効果があるのか、研修を受講した人がどこに注目していたかの情報などを収集することで判断することが可能です。

より効果的な安全研修へと改善していくことができます。

農業におけるVRの活用方法3.農機具の販売促進

農機具など、大型でなかなか展示会に出すことが難しいものをVRやARを用いて展示することで、まるでその場に存在するかのように見せることができます。限られた展示会のスペースでは各社の様々な製品を全て展示することには限界があり、実際に来場客が製品に触れることが困難なケースがありました。

農機具は一つ一つが大きいため、展示会などに多数展示するのは困難。一方で、どうしても高額な商品となってしまう農機具は実際に製品に触れたり、使用するイメージを持てたりしないと購買につながらないのも事実。そこで、VRやARといった技術を活用することで、展示会のスペースは削減した上で顧客に体験してもらうことが可能に。

実際の農機具の使用の様子などをVR上で再現することでより顧客が買いたくなる動機につながります。

農業におけるVRのメリット

VR 農業

ここからは農業にVRを導入することのメリットを解説していきます。

大きく4点のメリットをチェックしていきましょう。

農業におけるVRのメリット1.簡単に農業への理解を深められる

基本的に本格的な農業を体験したいとなれば、遠く離れた田舎まで足を運ぶ必要があります。そのため、小規模な畑や田んぼであれば都心部でも気軽に体験することができても、本格的な農業を体験するハードルは高いものでした。しかし、VRを活用すれば、都心部の家にいながらでも実際に農家の方が行なっている農作業を体験することができるように。

もちろん、実際に作業をすることができるわけではありませんが、VRコンテンツを用いることであたかも農業を自分が行なっているかのような体験をすることが可能です。農業を気軽に体験できることは、農業に興味を持ってもらうためには大切なこと。実際に体験することで、農業に対する肯定的なイメージを持ってもらうことができます。

学生や社会人で新しく農家になりたいといった方へのアプローチにもなります。

農業におけるVRのメリット2.リアリティのある研修になる

VRを導入するメリットはリアリティのある研修にすることができること。たとえば、安全研修では農業の事故はなかなか体験することができず、座学だけの研修だとどうしてもイメージを具体的に持つことができません。また、稲刈りの方法などの実際の業務についても、実際にやってみないとわからないもの。

高齢化が進み、なかなか農業の技術が伝播できない状況ではVRが役に立ちます。たとえば、VRを用いて安全研修を行うことで実際の事故のイメージや恐怖を体感することができ、安全に対する意識を高めることができます。また、農業の実際の実務の技術についても映像を主観的な目線で、リアリティを持って体験することが可能。それによって、技術を定着しやすくすることが可能です。

今後、若い層に後継者を求めるにあたり、VRを用いた研修は役立ちます。

農業におけるVRのメリット3.農機具購入をスムーズにできる

VR 農業

あまりにも大型な農機具は実際に展示会で展示されるケースは少なく、購入の際に直接実物を見ながら検討できるケースは非常に稀です。また、様々なオプションがついているケースも数多くあるため、どのオプションをつけるべきかをカスタマイズしながら確認したい、というニーズも数多く存在します。

たとえば、ARでの展示会を実現することで、仮想空間の中ではありますが、自身の目でしっかりと実物のイメージを確認することができます。また、VRで農機具を紹介することによって、実際に使っているイメージを顧客に持ってもらうことが可能。顧客に納得感を持って購入してもらうことができ、結果的に売上の向上につながります。

高額がゆえに納得感がないと購入につながらない農機具も、VRを用いて体験してもらうことで顧客が納得感を得やすくなります。

農業におけるVRのメリット4.遠隔から集客ができる

VR 農業

遠隔から集客ができることもVRの大きな魅力です。顧客からすれば、ぶどう狩りなどの実際に体験するコンテンツはこれまでであれば直接現地に来ることでしか体験できないものでした。しかし、VRを用いることによりその場に行くことがなくても体験することが可能に。リアルタイムで映像を見ながら行うことであたかも現地に行っているかのような体験を得ることができます。

農業を行なっている側としても、これまでは観光に直接来てくれた顧客のみがターゲットであったのに対し、VRを用いることで遠隔から集客を行うことができ、これまでに比べて市場が大きく広がることに。観光シーズンでないタイミングでも顧客がぶどう狩りだけを行なってくれるといったようなことも想定でき、シーズンを問わない集客にもつながります。

農業におけるVR・ARの導入事例を紹介

VR 農業

VRを農業に活用している実際の例を見ていきましょう。

VRで巡るTOKYO農業

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JA共済連の東京都本部は、VRやドローンを活用した体験型イベントを積極的に行なっています。

なかなか知られていない東京の農地を知ってもらうべく、「VRで巡るTOKYO農業〜360°の驚きの体験〜」というイベントを開催しました。

専用のゴーグルを装着することで3分半程度のVR映像とナレーションが始まります。

映像内では、スカイツリー周辺の住宅街に点在する野菜畑など、知る人ぞ知る「TOKYO農業」の魅力や役割を存分にPRしています。

また、VR映像の中では、クイズが出題されており、このクイズに正解するとJA共済オリジナルキャラクター「ひとのわグマ」グッズが贈られました。

参加者の中には、「東京にこれほど豊かな自然や田畑が残っていると知り、感動しました。風景がとてもきれいでした。」と驚いている方も。

東京農業の魅力だけでなく、その必要性や役割といった部分についても伝えることに成功しています。

VRでの農産物直売所ツアー

VR 農業

茨城県常総市の農業法人大地では、「農産物直売所みんなの市場VRツアー」が公開されています。

360°のパノラマ画像によって、近くで採れた野菜や果物などの直売所の様子や周辺の地域などを擬似的に体験することができます。

実際の売り場や商品も見ることができるので、これを見るだけでも常総市の農業の一端に触れることができたような気分になります。

なかなか現地に足を運ぶ機会が少ない地方の直売所を自宅からでも見ることができるので、これをきっかけに実際に直売所へと足を運ぶ方も増えています。

農作業での事故に対する研修コンテンツ

VR 農業

2021年6月に農林水産省の企画、NTTテクノクロスとNTTラーニングシステムズの共同制作で、畜産現場で発生しうる事故をVRで体感できる研修用VRコンテンツを公開しました。

畜産の他にも、水産業や林業の現場向けなど4つの業界に関する合計6つの映像が制作されました。

どの映像においても、想定される事故の状況を非常にリアルに再現しており、臨場感を持って事故を体験することができます。

実は、就業人口10万人あたりの農作業事故での死亡者数は多くなっているんです。

リアルな事故をVRで体験するからこそ、その体験後に流れる事故予防のための正しい手順説明がしっかりと記憶に植え付けられる効果があります。

事故が個人の責任とされやすい家族経営の農家を中心に、農業以外の産業と同水準の事故防止対策に一役買っています。

また、小規模経営であるために大規模な教育研修を実施できずにいる生産者にも取り入れやすいコンテンツとなっています。

ARを用いた農機具販売

VR 農業

IHIアグリテックは、北海道帯広市で開催された農業機械の展示会である「第34回国際農業機会展in帯広(第34回国際農機展)」で、AR(拡張現実)展示が行われました。

これまでは会場に搬入できなかった大型の農業機械をARを用いてお客さんに紹介し、部品の内部構造もARで示すことでアフターサービスなどに活用できるコンセプト提案も行なっています。

限られた展示スペースの中では、様々な製品を同時に展示することは難しく、特に寸法が10mを超えるような大型の農業機械を多数並べることはできませんでした。

今回の展示会では、展示が難しくなっていた大型の農業機械をARで紹介されており、オプションの交換も簡単に示すことができます。

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農業体験におけるVR・ARの導入事例を紹介

VR 農業

農業におけるVR導入事例は、広報や研修のみならず一般の方向けの農業体験においても使われています。

コロナ禍で実際の農地や農園を訪れることが難しいため、自宅にいながらどこででも農業体験ができるようになるVRは非常に便利な存在です。

ここでは、農業体験を目的に導入されているVR事例を見ていきましょう。

高校生向けの農業体験

VR 農業

島根県立出雲農林高等学校の食品科学科では、3年生の「果樹」の授業にてVR学習システムを活用したシャインマスカット摘粒作業の体験学習が実施されました。

「ぶどう栽培匠の技を次世代に継承するためのVR学習システム開発の実証」における一環として、出雲市農林水産部とTOSHIBAが共同開発しました。

生徒たちは、高校で栽培したシャインマスカットの摘粒などをVR体験学習を通じて経験することで、農作業の楽しさや難しさを体感できました。

生徒の声としては、

「ゲーム感覚で摘粒が学べ、”農業は難しい”というイメージを払拭できそう!」

「もっとブドウの感触や臨場感が出ると面白いかも」

「なぜこの粒を摘粒するか、説明などがあればもっと分かりやすい」

といったものがあり、主体的に農業に参画する意識が芽生えていることが分かります。

農業・農村体験コンテンツ

VR 農業

農村振興局では、農業や農村に関する理解を深めてもらうためのVR体験コンテンツを作成・展開しています。

これによって、誰でも簡単に農業や農村のVR体験を行うことができ、普段なかなか見られない土地改良施設などを身近に感じられることでしょう。

公開中のコンテンツには、水田にいる生き物を探す子供向けのものから、ダムの映像や開発段階にある”自動運転”田植機など、幅広いジャンルがあります。

YouTube上で公開されているコンテンツになりますので、パソコンやスマートフォンで気軽に視聴することができるようになっています。

シャインマスカット狩り体験

VR 農業

長野県の岡木農園では、Qtas Japan合同会社と協業する形でオンラインでのシャインマスカット狩りの募集が行われています。

自宅で手軽にシャインマスカットの美味しい食べ方やブドウの豆知識などが学べ、オンラインでのシャインマスカット狩りも体験することができます。

自分で選んだ最高級のシャインマスカットはその日のうちに自宅に配送されるので、採れたてで新鮮な状態のシャインマスカットが食べられるんです!

自由が制限される昨今において、全く新しいブドウ狩りを提案している事例と言えるでしょう。

VRで農業をより身近で安全な産業に!

今回は農業におけるVR導入のメリットとその活用事例について紹介してきました。

コロナ禍などによって、なかなか実際の農業に触れづらい状況下で、上手くVRを導入すれば農産物の販売促進や後継者育成といった効果を期待できます。

また、農作業での事故も、VRを導入することで効率的かつ効果的に研修を行うことができるので、安全性の確保も実現できます。

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