VRと空間データ活用のヒントが見つかる

航空業界でのVR技術導入事例7選!飛行機の操縦体験や整備・機内業務にも活用!

hikouki

VR(Virtual Reality)と聞くと一般的にはVRゲームが思いつくかもしれません。

飛行機や航空機に興味がある方なら、飛行機操縦を体験できるVRゲームなどを手に取ったことがあるでしょう。

航空業界では飛行機操縦のためのフライトシミュレーター以外に、航空機整備や機内業務などもVRで研修が行われつつあります。

ここでは、航空業界におけるVRの活用法の現状や、実際の導入事例について紹介していきます。

2021年11月リリース「2021年度 社員教育におけるVR活用の意識・実態調査

世間一般におけるVR研修に関するイメージ(意識調査)と、実際にVRを導入している事業者の体感 (実態調査)の両面でアンケート調査を実施しました。

☑ 意識調査ではVRゴーグル購入や制作費用が高いイメージだが、実態としてはPCやスマートフォンにおけるVR活用がメインであり、年間コストも50万円以下とVRに対するイメージと実態にギャップがある。
☑ 意識調査では約6割の事業者が今後のVR活用について懐疑的。実際にVRを導入した事業者の6割以上が効果を実感。今後も利用を継続していくため、一度VRを試せば継続的に活用していく傾向。

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【目次】

VRの航空業界での活用方法

VR 航空業界 活用

航空業界では、航空機自体が非常に高価で数が少ないため、実機を使った研修はどうしても機会が限られる傾向にあります。

しかし、研修そのものは重要であるため、VRを活用することで効率的な研修を実施できるのです。

1.整備業務や機内業務研修

機内整備や保安業務の研修は、実際に機内で現物を用いた研修が必要不可欠でした。

しかし、VRの活用によって、ヘッドマウントディスプレイを通して機内の様子を再現したCGで機内に居るような感覚を得ることができます。

研修時の様子は録画をすることもできますし、ライブ映像として別の場所で同時に見ることも可能です。

これによって録画した研修の様子を別の人が追体験できたり、訓練生に対してどのようなところに注目すべきかなどの視覚的なアドバイスができます。

また、訓練生にリアルタイムに指示を出し、確認すべき場所などに誘導することもできます。

VRを導入したからこそできる、非常に有用な訓練と言えるでしょう。

2.航空機整備や運行管理研修

航空機自体の整備や空港での運行管理も、実際の環境での反復訓練が非常に難しい研修です。

整備に関する研修で使える航空機の数は限られているため、開催できる研修の回数にも限度があります。

また、空港での運行管理に関する研修も、空港の日常業務などに支障が出るため短いスパンで開催することはできません。

もちろん、絶対に必要な研修であるため、すべてをVRにすることはできません。

しかし、VRを活用した研修を併用して行うことで反復訓練が可能になります。

また、実際の環境での研修を行う前にVRを利用した研修を行っておくことで、貴重な実際の環境での研修時間を有効に使うことも可能です。

3.操縦体験

航空業界におけるVRの活用法といえば、やはり操縦体験でしょう。

元々、実際のコックピットに極めて近いフライトシミュレーターは存在しましたが、VR技術によってよりリアルな視界の操縦体験を行うことが可能になりました。

コックピットの窓から見える景色も、VRなら立体的で現実のような風景として捉えることができます。

実際の機体を用いて研修する機会が少ない飛行機の操縦を、VRによって比較的容易に体験することが可能です。

VRを航空業界の研修や訓練で活用するメリット

VR 航空業界 メリット

VR技術が航空業界の様々なシーンで活用できるのは先述の通りです。

ここでは、VRを導入することで得られる具体的なメリットを紹介します。

1.リアルな研修が行える

VRは実際に業務を行う空間とは異なり、あくまで仮想的な空間です。

そのため実際の研修よりレベルが低いと思われがちですが、VR技術によって行える研修もかなりリアルなものとなっています。

なぜなら、VRを用いた研修であれば、訓練生が何をどう見ているかを録画やライブ映像として確認することができるから。

加えて、時間や場所を選ばず様々なシチュエーションの研修を行えるというのは大きなメリットの一つです。

2.環境の再現が困難な訓練が容易に行える

実機や現場での研修を行える機会は限られてしまうため、時間や天候を選ぶことは難しいですが、VRの研修なら様々な状況設定を課した訓練を行うことができます。

実際の研修時は昼間だったために明るくて気づけた部分が、日没後などに同じように見えるとは限りません。

天候以外では事故や災害時の再現なども可能なため、現実では再現することが困難な研修を行えるというのもVRならではの長所です。

3.どこにいても研修ができる

VR研修は時間や場所を選びません。

これは大きなメリットです。

実機や現場での研修となれば、移動時間などのコストも無視できない数字になってくる場合があります。

しかし、VRならある程度のスペースとゴーグルなどの専用の装備があればどこでも行うことができます。

座学で教えたことをその場でVRで確認するという形で研修を行うことも可能で、研修期間の短縮にも効果的です。

VRで飛行機の操縦研修を行うメリット

VR 飛行機 メリット

航空業界における様々なシーンの訓練においてVRは有用だと解説しましたが、飛行機を実際に操縦する研修においては特に有効に機能します。

ここでは飛行機の操縦研修をVRで行うメリットをみていきましょう。

1.没入感が増す

そもそもVR技術はただ映像を流すものではありません。

首を動かせば当然視野は変わりますし、自分が立ち上がったり歩いたりすればそこから見える景色も変わります。

従来のシミュレーターのようなコックピットの前面だけを切り取った操縦体験では後ろを向けば何もありませんが、VRならどこを見てもコックピットの中。

操縦そのものにしても従来のように画面に映った映像を見ているだけではなく、立体的で現実感のある風景が広がるでしょう。

そのため、自分が本当にコックピットで操縦しているかのような没入感を得ることができます。

2.天候などの環境の再現ができる

飛行機の操縦研修をVRで行う際にも、整備や保安業務の研修と同じように様々なシーンを再現した研修をすることができます。

朝なのか夜なのか、晴れているのか曇っているのか、そういった細かな環境の違いをVRなら簡単に研修することができるのは大きなメリットです。

VRの導入によって今まで以上に様々なシーンの研修を行うことができ、様々なケースに対応できるパイロットの育成にも役立ちます。

3.角度など細部まで再現ができる

微かに機体を動かした場合にどう変化するかや、背筋を伸ばしたらどう見えるかなどの細かな部分まで再現できるのがVRです。

従来のシミュレーターでは映像が大雑把に変わる程度で、あくまでコックピットに座っている目線での映像しか表示されませんでした。

また、画像は平面的であるため現実感があるとは言い難い映像になります。

しかし、VR技術によって見える映像はまるで実際に動かしているかのように再現されています。

よりリアルな操縦研修が行えるのは、VRならではのメリットです。

VRを航空業界で導入するデメリットと解決策

VR 航空業界 デメリット

VR導入がいかに有用か紹介してきましたが、デメリットがない訳ではありません。

ここでは、VR導入によって発生しうるデメリットとその解決策を紹介します。

1.初期費用がかかる

VRで研修や訓練を行うためには、ヘッドマウントディスプレイやゴーグルなどの専用の器材が必要になります。

どの程度のクオリティを求めるか、どれだけの数が必要かなどにもよりますが、初期費用は数十万円程度は見ておく必要があります。

確かに、新たに初期費用がかかるのはデメリットに見えるかもしれません。

しかし、フライトシミュレーターなどの従来の設備の導入や維持にかかる費用はそれをはるかに超える莫大な金額となります。

つまり、長い目でみれば従来の研修と比較しても、VRを用いた研修ははるかに低コストで運用が可能なのです。

2.VR技術に慣れる必要がある

VR導入にあたっては、専用の機材をそろえる初期費用がかかるだけでなく、VRに慣れるために必要な研修が別途必要となります。

しかし、新人研修などの若い年齢層を対象とした研修を想定すれば、パソコンやゲームに普段から慣れ親しんでいることからも短期間で慣れてくれることが考えられます。

また、様々なシチュエーションでの訓練を短期間で集中して行えるのはVRのメリットであり、最初の導入に時間がかかったとしても、VRでの研修時間の短縮によって全体的な時間コストは下がる可能性が非常に高くなります。

訓練の習熟度が従来より上昇し、訓練時間も短縮が可能であることを考えれば、慣れるまでに時間がかかる点はさほど大きなデメリットではないでしょう。

3.航空業界ならではのVR環境を構築する必要がある

航空業界は、様々な役割のスタッフが組織的に協力し合って成り立っています。

そのため、一部門だけVRを導入して研修というのは難しいことが考えられます。

VR環境の構築にあたっては、各担当と十分に相談をしなければ導入自体が難しいことはデメリットです。

どの研修にどのような機能が必要なのか、何を研修すべきなのか、などを社内で相談してもまとまらない可能性もあります。

そういった場合には、しっかりとした要件定義に基づいた提案をしてくれる企業と協力を進めていくことが重要です。

2021年11月リリース「2021年度 社員教育におけるVR活用の意識・実態調査

世間一般におけるVR研修に関するイメージ(意識調査)と、実際にVRを導入している事業者の体感 (実態調査)の両面でアンケート調査を実施しました。

☑ 意識調査ではVRゴーグル購入や制作費用が高いイメージだが、実態としてはPCやスマートフォンにおけるVR活用がメインであり、年間コストも50万円以下とVRに対するイメージと実態にギャップがある。
☑ 意識調査では約6割の事業者が今後のVR活用について懐疑的。実際にVRを導入した事業者の6割以上が効果を実感。今後も利用を継続していくため、一度VRを試せば継続的に活用していく傾向。

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VRを航空業界で採用している事例を紹介

VR 航空業界 事例

VR導入によるデメリットは解決可能なものが多く、メリットが大きいためにすでに航空業界の様々な場面で導入されています。

ここでは、実際に航空会社によって導入や実証実験が行われているVRの活用事例を紹介します。

日本航空(JAL)の客室乗務員向け訓練

日本航空 客室乗務員向け訓練

日本航空(JAL)では客室乗務員の訓練生向けに、VRコンテンツによる研修の実証実験を行いました。

1回の研修で4人の訓練生が同じ仮想空間に入り、連携をしながら出発前の安全確認が行われる、という流れです。

座席や客席上部の荷物棚はもちろん、ギャレーや備品収納棚など実際に確認すべき場所がほとんど再現されています。

VR上で確認をして問題があれば手持ちのコントローラーで施錠などの操作が可能です。

これらの研修中の行動はすべて記録されており、厳密に採点できるのも特徴の一つ。

また、確認漏れがあれば、それが原因で起こる事故も再現されます。

現実には再現ができないような事故の場面を見ることによって、確認の重要性などを視覚的に理解できるでしょう。

日本航空(JAL)の緊急脱出研修

日本航空 緊急脱出研修

日本航空(JAL)では客室乗務員向け訓練とは別に、機内で事故が起きた場合の脱出訓練が2020年よりVRにて行われています。

事故中の脱出は再現することが難しいシチュエーションの訓練ですが、VRの特性を活かした実践的な訓練と言えます。

VR研修を導入する以前の研修であれば月に500人程度の受講が限界でしたが、10台のVRゴーグルを導入した研修では2ヶ月間で約1,800人が受講できるようになりました。

この研修は乗務員以外にも行われており、乗務員でなくても非番の際に乗り合わせた社員が脱出の支援を行えるようにするための研修です。

VR導入により研修を行える回数が大きく増加したことで、最優先で習得すべき社員以外のスタッフにも広く研修を行うことが可能となりました。

日本航空(JAL)が導入した牽引作業のシミュレーター

日本航空 牽引作業

日本航空(JAL)では、航空機の牽引研修もVRで実施されています。

VR研修では通常のコンディション以外に、雨や雪などの悪天候を設定して研修を行うことも可能です。

また、VRならではの特性として360度すべての視野を再現しているので、運転席から覗き込んだ場合や後ろを振り返った場合の視野も再現されています。

これによって限りなくリアルでありながら、現実では再現が難しい環境での研修も可能です。

このシミュレーター自体も持ち運びできる大きさのため、地方空港などでも研修が可能になりました。

日本航空(JAL)のVRを活用した整備研修トライアル

日本航空 整備訓練

同じく日本航空(JAL)では、航空機整備の国家資格を取得する際の研修の一部でVR研修のトライアルが行われました。

現在、航空機そのものの精度向上による不具合の減少から、整備研修の機会が少なくなりつつあります。

そこで、VRを導入することによって、実際の環境に極めて近い状態で整備研修を行う機会が増え、整備技能の向上が図れます。

全日本空輸(ANA)の客室乗務員向け訓練

全日本空輸 客室乗務員向け訓練

全日本空輸(ANA)は2019年にVRシステムを本格導入し、客室乗務員の訓練生の育成に使用を始めました。

火災や急減圧などの実際に再現することが極めて難しい状況をVRによって設定し、緊急事態での対応などを適切に行えるよう研修を行います。

また、機内の安全確認業務においてもVRは非常に効果的です。

研修の状況はすべて保存されており、しっかりと扉のロックができている場所とできていない場所も明確に表示されます。

確認すべき場所の数や研修で確認した数なども明確に表示されるようになっているので、ミスに至った経緯をしっかりと探ることが可能です。

スカイマークとSoftbankの整備士・客室乗務員の研修に活用

スカイマーク Softbank 研修

スカイマークでも、VR映像を活用できる研修や訓練コンテンツの検討を進めています。

360度すべてを見ることができるVR映像を導入することによって、航空機の非常脱出スライドを展開した状態を再現した視野などを見ることが可能になります。

訓練のたびに航空機の非常脱出スライドを開いてしまうと、莫大なコストと手間がかかってしまいます。

しかし、VRであればこのような研修もコストと手間を最小限に抑えて実施が可能になります。

AIR DOの新人客室乗務員訓練生にVRを活用

AIR DO 新人客室乗務員訓練

AIR DOではタブレット端末を利用して、機内を360度視認可能なVR映像を表示し、重要なポイントにアイコンを設定して確認可能な教材を導入しました。

このタイプのVR研修はゴーグルを利用するものと違い、タブレット端末の画像を見るものになります。

訓練教官が指定した場所を同じように操作して、該当箇所の映像を確認することで機内の様々な場所を疑似的に把握することが可能になります。

緊急時に必要な機内の構造知識なども教材として画面で共有することで、非常救難対策研修の一環として活用することも可能です。

VRで飛行機・航空業界の業務をスムーズに!

今回は飛行機や航空業界でのVR活用について紹介しました。

実機を使った研修を頻繁に行えるものではないので、操縦や整備を始めとした様々な航空機に関わる業務でVRの活用が期待できます。

VRを活用することによって従来より効率よく研修を行えるだけでなく、再現が難しいシチュエーションでの研修なども行うことができるのも大きなメリットです。

初期費用などの問題はありますが、長期的に考えればVR導入はメリットは非常に大きいでしょう

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