(2017年10月7日 一部内容を更新しました)
VR酔いとは、一般的な「乗り物酔い」と同じようなもので、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)で目の前に見ている画面と、自分の生身の感覚との“ずれ”によって主に生じる動揺病の一つです。
新しい乗り物が発明されるごとに、船酔い、車酔い、などが認識されてきましたが、VRのためのHMDという新たなデバイスでもこのようなことが認識されるようになりました。
PSVRが発売され、VRデバイスが広く普及したことで、「VRで酔ってしまう」といった相談を頂くことも増えてきました。そこで今回の記事では、その原因、VR酔いになりやすい人、VR酔い対策について簡単にまとめます。
乗り物酔いと同様、三半規管の混乱によるもので、視覚からとらえる情報と現実の自分の体が覚えている感覚との不一致、差によって生じています。
例えば、振り向いて景色が変わる時に、自分の感覚ではこういう景色になっているはずと思っていても、目の前のHMDに出てくる景色が少しだけ遅れるような時や、奥行きの認識で自分が移動してこういう景色が見えるはずという感覚とはずれた景色が目の前に見える時などがあります。
これは、開発者側で努力できる部分ももちろんあります。例えば、映し出す画像を1秒間に何回出すかというフレームレートというのを指標にして、それが大きいほど、上記のずれは少なくなるので、そのような指標の改善を図ることなどがあります。
VR元年を終え、エンタメだけでなく、不動産や観光など様々な分野でVRが使われるようになり、一般の人がVRコンテンツをかんたんに制作できるようになりました。
そのようなソフトの中には、画像処理がレンズの歪みや視差を考慮していない、画像が綺麗でない、フレームレートが十分でなくカクカクした動きのものなど、まだまだ不十分なものもあります。
このようなVR酔いは、一般の人には不快な思いを与えてしまうので、ビジネス利用などの場合は特に注意が必要になります。
こういった観点に十分配慮してはじめてVRを見る人でも酔いにくいコンテンツを制作できるソフトとして開発、設計しているものもあります。Spacely (スペースリー)はその一つです。
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乗り物酔いと同様、個人差があります。俗に言う三半規管が強い人はなりにくかったり、少しずつ慣れてくるとVR酔いになりにくい、といったことがあります。
日本バーチャルリアリティ学会(バーチャルリアリティ学/日本バーチャルリアリティ学会)によると、一般に女性の方が男性よりもなりやすいこと、また、12〜15歳までは酔いやすく、その後年を取るごとになりにくくなる、といったことが記載されています。
また、外交的、積極的な人もなりにくい傾向があるようです。
i)長時間をやらず、酔いにくいコンテンツを選ぶ
なりやすいかどうかも初めてだと分からないと思うので、まずはいきなり長時間で楽しむのでなく、数分程度で試すことが必要でしょう。
また、コンテンツによっても違うので、例えば、動画よりも静止画の方でまずは少し慣れることも良いでしょう。
動画も、視点が動くものや動きが激しいものよりは、カメラの視点が少ないものや動きが激しくないものから試してみると良いでしょう。
ii)ちゃんと焦点を合わす
なるべく違和感が少なくなるようにする、という点では、HMDを通じて画面を見たときに、焦点がなるべく自然で合っている状態にすることで、よりなりにくくなります。
iii)激しく頭を動かさない。
自分で頭を激しく動かさず、ゆっくり動かすということでVR酔いにはなりにくくなります。
iv)慣れる
上記のコンテンツを選びながら、少しずつ慣れていくことも、VR酔い対策として有効ですし、より多くのコンテンツを楽しめるようになるために重要です。
v)酔い止めを飲む、梅干しを食べる。
VR酔い対策というよりも、乗り物酔い対策で、裏技的ですが、有効な方法です。
酔い止めも効きますし、梅干しなどを食べて唾液が出ることで三半規管のバランスが整い、一般的には酔いにくくなります。
vi)新たな技術へ期待
どうしても自分は酔いやすいという場合には、新たな技術に期待する、ということで待つしかないのかもしれません。
例えば、2016年4月には、米ミネソタ州の総合病院、メイヨー・クリニックは、頭につけた電極から微量の電気を送り、VR上での動きに合わせた信号を神経に伝えることで、酔いを防ぐという技術を開発したというニュースがありました。そして、これをロサンゼルスのスタートアップ、vMocionがVR酔い対策に商用化していくといった話がありました。
このような今後出てくる新たな技術は期待したいところです。
では、実際にVR酔いになってしまったらどうするのが良いでしょうか。
VR酔いは、ちょっと酔いそうだな、と思えば自分の意思でHMDを外してやめることができますし、深刻にはなりにくいものではあります。ただ、なってしまった時のことも気になるかもしれません。実際には、乗り物酔いになった時のことと同様なことが、ここでも有効です。シンプルですが、
i)遠くを見る、眺める
バスで酔ったら遠くの景色を見るということをする方も多いかと思います。遠くのぶれない風景を見ることで、不快感を軽減させることができます。
ii)クールダウン
外の空気を吸ったり、涼しい空気にあたるのも良いです。アイスを食べるなどの冷たい刺激、というのも有効です。
iii)休む、寝る
最後の手段はシンプルですが、休む、寝る、です。VR酔いは時間が経てば治るものです。
今やYoutubeでもVR対応の360度動画が増えてきて身近になってきましたが、同時に、VR酔いといったちょっとした負の側面についてちゃんと理解して、VRを活用、楽しむことが大事です。
個人の楽しみに加えて、ビジネス分野での利用、特に不動産分野での利用も広がってきましたが、個人利用と同様、このような負の側面への理解、注意も必要でしょう。ビジネス分野での話は、以下の記事も参考にしてみてください。
参考リンク(1):
不動産でVR?導入がすすむ理由と具体的な活用事例
参考リンク(2):
どこでもかんたんVR “3D Stlylee”のウェブサイト
参考リンク(3):
VRの基礎知識についての記事一覧
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