VRと空間データ活用のヒントが見つかる

VR技術を導入しているインフラ企業事例6選!業界のかかえる課題についても解説!

VR インフラ

VR技術はゲームやコミュニケーション、医療・建築といった様々な業界・領域で積極的に活用されつつあります。今後もVR技術を活用したテクノロジーは発展していくことが予想されます。

そして人々の生活に欠かせない「インフラ業界」においても、VR技術の導入は行われています。ここではインフラ業界が抱える問題と、その解決にVR技術が非常に有益な点、そして実際にVR技術を採用しているインフラ業界の企業事例を紹介していきます。

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【目次】

インフラ業界が抱える問題

生活の維持に欠かせないインフラ業界は、数々の課題や問題を抱えています。特に先進国におけるインフラの課題は深刻です。ここではインフラ業界における課題について項目ごとに紹介していきます。

インフラ業界の問題①社会インフラの老朽化

特に先進国は高度成長期に社会インフラに関する建物や設備などを建設・整備していきました。数十年たった現在、それらの建物や設備の老朽化が問題となっています。

2007年のアメリカ・ミシシッピ川にかかる橋の崩落事故にり、死者は13名・負傷者145名の被害者が生まれました。運輸省の調査によると全米の25%にも上る橋に欠陥があることが分かりました。

これはアメリカだけの問題ではなく、イギリス・ロンドンでは水道のおよそ半分が建設されてから100年を超えていたり、ドイツの高速道路の大部分は建設時から50年以上が経っているとのことです。もちろん日本国内においても同様に社会インフラの老朽化は深刻な問題となっています。

国土交通省は2018年から2033年における社会資本の老朽化の推移を予想したところによると、道路・橋は25%~63%、そしてトンネルにおいては20%~42%、そして河川管理施設は32%~62%へと今後20年間で50年を経過する施設の割合が増えていくと示しました。

参考:急がれる社会インフラの老朽化対策。AI や IoT を駆使したインフラメンテナンスとは

インフラ業界の問題②業務の難しさに伴う人材不足

「道路・鉄道・港湾・空港等の産業基盤や上下水道・公園・学校等の生活基盤、治山治水といった国土保全のための基盤」がインフラに当たります。これらの全ての業界に共通していえる課題は、技術者の人材不足です。

インフラの安全を確保させるてには熟練の技術者による点検が必須になりますが、地方部分などには技術者が不足しているもしくは不在ということも少なくありません。定期的なメンテナンスは必須な業界だからこその問題と言えるでしょう。

インフラ業界の問題③費用面

インフラ事業は、主要エリアや都市部にはすでに道路や鉄道網といった交通手段が行き渡っています。そのため、これ以上の投資は以前ほどの経済効果が望めないことも問題となっています。

さらに少子高齢化や長引く不況のあおりを受けて日本国経済自体が厳しい状態を続けています。そのため、社会インフラへの親切に充てる予算が縮小されていることも珍しくありません。

さらに老朽化への対策は必須な上、耐用年数の更新には莫大な費用を確保する必要が出てきています。費用対コストのバランスが悪い事も背景となって、社会インフラの整備はますます深刻化する一方となっています。

参考:https://www.buddynet.jp/column/infrastructure

インフラ業界にVRを採用するメリット

インフラ業界の抱える課題は世界共通であることがわかりました。ここではVR技術をインフラ業界に採用するメリット・効果を紹介していきます。

VRをインフラ業界に採用するメリット①技術の伝承

インフラ業界だけでなく、様々な業界では熟練の技術者のスキル習得を次世代に伝えていく難しさを抱えています。そこでVR技術を投入することによって解決が期待されます。

VRは仮想現実を作り出し、まるでその場にいるかのような疑似体験ができることから、熟練技術者の技術をケースとしてデータ化することも可能です。通常の動画や資料では、共有しにくかった側面もVRでなら解決できるというものです。

また遠隔地からでもアクセスが可能なので、都市部から地方にいる技術者に対してリアルタイムで指導・支援していくことも可能となります。物理的な距離の束縛を受けなくて済むというのもメリットといえるでしょう。

VRをインフラ業界に採用するメリット②人材不足の解消

地方公共団体にはそもそも技術者が少ない・不在という課題がありましたが、先ほど紹介した通り距離に関係なく、VRでの支援が可能です。そのため、その場に赴かなくても支援ができることで人材不足の解消が期待できます。

VRをインフラ業界に採用するメリット③コスト削減

現地に赴かずに遠隔で指示・指導ができるということは、実際にスタッフを送る交通費や宿泊費といった費用削減にもつながります。また現場に集合するという時間的な問題もないので、時間の削減も期待できるでしょう。先進国だからこそ抱える問題に対して、VRの活用が期待されます。

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VRを導入しているインフラ企業の事例

実際にVR技術を導入しているインフラ企業の事例を紹介します。従来の問題・課題の解決になるプロセスなども分かるので、VR導入を検討する際にぜひお役立てください。

VRを導入しているインフラ企業①Colas

世界中に事業を展開する大企業であるColasは、資源回収・リサイクル事業、カーボンフットプリントの削減・建築事業による環境への影響削減といった試みなどで、業界をリードしている存在です。

ColasがVR技術を導入したのは「安全訓練」の場面です。なんと予算の50%を以上を割くほど。従業員の安全に対する意識の高さから、安全監査、現場安全講習、専門的な事故防止研修、そして応急処置訓練に費用を投じています。

HTC VIVEのプロフェッショナル品質のVRシステムと、Immersive Factoryのアクティブラーニング訓練プログラムを採用することで、新人教育の強化に力をいれました。社内調査により判明した、過去数年間に発生した事故のうち約60%が作業経験が2年未満の従業員が関わっていることが背景にあるからです。新人教育をしっかりとすることで、事故のリスクを下げる事が期待されます。また、バーチャル建設現場でのトレーニングは「楽しく内容が身につくもの」というのもユニークです。

参考:道路建設の世界的大手Colas、安全教育訓練にVR導入

トレーニングの結果、ほとんどの従業員が「これからは〇〇について気を付けようと思う」と意識の改善が感じられた結果が得られました。

VRを導入しているインフラ企業②シェブロン

アメリカの石油大手「シェブロン」は、遠隔地との共同作業を行うためにVR技術を活用しています。離れた場所いる相手とハンズフリーで会話できるだけでなく、自分の見ている状況をリアルタイムで共有できるのが特徴です。

さらにその場にコメントを書き込んだりマーキングの機能も備わっています。場所の制限がないので、出張費の削減・業務リスクの低下や業務効率の向上効果も得られています。例としては、アメリカ・ヒューストンのオフィスにいながらにしてシンガポールのプランと月次検査ができるといった事です。

VRを導入しているインフラ企業③ANA・JAL

ANAやJALといった航空業界においてもVR技術は本格的に導入されています。機内設備の安全確認をはじめとして、保安業務訓練や航空機の牽引車両の運転訓練といったトレーニング画面での導入が本格化しています。ANAは2019年にNECが開発したVRシステムを導入して客室乗務員の育成用途を目的として活用しました。

火災や急減圧といった実際には再現が難しい機内状況においてもVRで忠実に再現できるので、緊急事態の発生時にこれまで以上に適切・迅速に対応できる育成が可能になると期待できます。

その他機内ギャレー(厨房)を再現したVRを用意して安全確認作業の習得にも活用されています。全部で50か所以上のチェック項目をVR内で確認していきます。もし確認漏れがあった場合は、離着陸時に棚からモノが落ちたり滑り出すといった状況も忠実に再現出来ています。

そして確認漏れの箇所をギャレーに明示してくれるので、自分がどの部分でミスをしたかも一目瞭然です。JALにおいても、航空機の牽引訓練などでVR技術が採用されています。

シミュレーターでは雨・雷・台風といった気象条件を設定した上で訓練ができます。360度全方位の視野が再現できるので、牽引車両の運転席側から「覗き込む」「振り向く」といった実際に行う安全確保動作も可能となっています。

さらにシミュレーターは持ち運び可能な作りとなっているので、使用機材や場所の制約もクリアしています。そのため地方空港での訓練も可能となり、空港による訓練の習熟度の差も生まれにくいと期待されています。

JR東日本

JR東日本は、事故現場・工事に伴う停電で続きといった実際に再現・訓練が難しい場面でのトレーニングにVR技術を導入しています。

参考:VRで安全訓練、JR東日本大宮支社発表

主な訓練内容は、地震発生や人身事故といった走行中の以上時対応訓練、車両故障時の取り扱い訓練、実際の線路上での実地訓練が困難なシーンの再現となっています。

NEXCO中日本

高速道路外での想定訓練

参考:VRで高速道路の危険性を疑似体験、交通管理隊員育成や一般向け講習に活用

NEXCO中日本は2020年12月に高速道路の交通管理隊員育成を目的としたVRコンテンツを開発・導入しました。事故・故障といったトラブルの発生場所に素早く駆けつけて、安全確保をした上で交通規制・自己処理を行います。

従来の訓練では、実際に現場で確認してみないと感じにくい緊張感・危険性・スピード感の実感が難しいという課題を抱えていました。そこで、この業務を円滑かつ安全に行うために様々な事故処理を想定したシーンを再現するVRコンテンツを活用したところ、360度全方位の立体的な空間再現が可能なので、従来の訓練よりもよりリアリティのある状況で学習が行えます。

たとえば、車両規制作業時の侵入車両があった場合の避難、渋滞時での後続車両からの追突事故といった業務上での危険性が疑似体験できます。その他、あおり運転・ながら運転といった高速道路で発生しがちなトラブルの対処に関する機能も搭載されています。

第一建設工

参考:VR で橋脚補強の新工法を PR

河川内での橋脚補強工事に必須な作業空間を確保するための新しい仮設工法を開発し、作業員への説明やプレゼンテーションの場面としてもVRを活用しています。

VRゴーグルを付けて仮設の中を歩くような体験ができるので、内部の作業空間や広さをより感じやすくなっています。従来では橋脚を囲むように河床に矢板を打ち込み、作業空間を作る方法をとられていました。

この方法はとても仮設の設置だけで3か月以上も必要となります。特に河川内で行う工事は、10 月 ~ 3 月の渇水期に間に合わせなければなりませんが、この方法のままでは十分な時間が取れないという課題がありました。

そこでVRゴーグルを装着して行う「D-flip 工法」をとることで、補強工事が行いやすくなり、わずか1か月程度で作業空間を作れるようになりました。

従来の断面図・側面図といった図面だけでは複雑な立体構造を把握することが難しく作業手順なども分かりにくい問題がありました。しかしVR技術を導入することによって、安全を配慮した上で確実にかつ効率的に作業を進めることができるようになりました。

参考:http://bim-design.com/infra/case/daiichi_kensetsu.html

AR・MRを導入しているインフラ企業の事例

VR技術と同じように作業の効率化やコスト削減などにも効果が期待できるAR(拡張現実)・MR(Mixed Reality)もまた、インフラ業界で活躍しています。ここではAR技術を活用しているインフラ企業の事例を紹介します。

AR・MRを導入しているインフラ企業①株式会社日立製作所、YAMAGATA株式会社、京都機械工具株式会社

近年AR/VRの技術は、ゲーム業界に留まらず、様々な業界で実験的に利用され始めています。

参考:鉄道車両向けボルト締結業務にARを応用

株式会社日立製作所、YAMAGATA株式会社、京都機械工具株式会社の3社が共同で開発したARは、鉄道車両向けのボルト締結業務管理システムです。

鉄道車両の製造だけでなくメンテナンス時に締めるボルトの位置をARで示すことで締め忘れを防ぎます。さらに締める力緒データとして利用できるので、きちんと締められているかといった程度の確認としても活用可能です。

今後は作業員の作業記録をARデータとして保存していくことで、熟練作業員の不足といったインフラ業界が共通して抱えている課題のクリアや業務効率の向上にもつなげていけると期待できます。

AR・MRを導入しているインフラ企業②三井住友建設

MRゴーグルの「Microsoft HoloLens」に補修履歴を入れて、トンネル内部と重ねて見られるトンネル・メンテナンス・ナビゲーションシステム「MOLE-FMR」

参考:トンネル内の補修履歴をARで見える化

三井住友建設は導水路トンネルの点検作業にAR・MRを導入しています。導水路トンネルは薄暗く・表面の汚れなどがよく見えない状況で、補修記録とひび割れの補修箇所の比較を目視しながら行っていました。

熟練の作業員でも困難を極める作業ですが、AR技術を導入することで、3D画像として表示できるようになりました。開発には長年蓄積されていた調査・点検記録、そして施工・補修履歴といった情報を集めて3Dモデル化しました。

そしてスマートグラスを通して現実の空間に補修・点検履歴を3Dで表示させることでLED照明のわずかな光源でも正確かつリアルタイムに点検箇所が表示されます。これにより、静岡県の富士宮市内の導水路トンネルの点検作業は従来よりも半分の時間で作業が終わったとのこと。

AR・MRを導入しているインフラ企業③トヨタ・JR東日本

参考:MR(複合現実)を作業効率化や訓練に活用

トヨタ自動車株式会社とJR東日本は、塗装の膜厚検査や試作工場の設備移設業務においてMRデバイスを活用しています。大型施設の入れ替えシミュレーションを受けることで事前に安全性の確認ができます。

これまでの手法

MRを用いた手法

参考:https://www.moguravr.com/microsoft-tech-summit-2018/

同じようにJR東日本では鉄道進行設備の保守業務や線路設備の保守訓練においてMRを活用しています。

参考:鉄道信号設備の保守業務

ベテラン社員が音声で作業員に指示を出すだけでなく視覚的な指示が出来るようになった点が挙げられます。遠隔地でも図面や資料が共有できるので、ベテラン社員のノウハウなども現場で活かすことが可能になりました。

まとめ 

インフラ業界におけるVR技術の活用について紹介しました。安全配慮が重要な業界でもあるインフラ業界では、コストや人件費・時間といった様々な課題を抱えています。

しかし、VR技術の導入によりこれらの問題の解決に効果が期待できることがわかりました。初期費用がかかるという問題はありますが、将来的な側面から見てVR技術を活用することは非常に有用だといえるでしょう。

 

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