VRと聞いて一番最初にイメージが湧くのは何でしょうか?
おそらく、多くの方がゲームや動画などエンタメ向けのコンテンツを思い浮かべるかと思います。
そんなイメージに反して、近年VRは、研修や教育分野において大きな注目を集めています。
2018年9月には、アメリカ最大のスーパーマーケットチェーンであるウォルマート(walmart)が、17,000台ものVRデバイスを導入してVR研修を行うことを決めたというニュースが大きく取り上げられました。これによって100万人のスタッフに対してVRトレーニングを行えるようになっています。
今回の記事では、ウォルマートがVR研修を導入した背景や導入したことによるメリット・効果についてご紹介していきます。
※スペースリーの防災研修のVRサンプル。パソコンから見る際は、画面右下のフルスクリーンボタンをクリックして閲覧をお願いします。VRを使うとこういったことも可能です。
世間一般におけるVR研修に関するイメージ(意識調査)と、実際にVRを導入している事業者の体感 (実態調査)の両面でアンケート調査を実施しました。
☑ 意識調査ではVRゴーグル購入や制作費用が高いイメージだが、実態としてはPCやスマートフォンにおけるVR活用がメインであり、年間コストも50万円以下とVRに対するイメージと実態にギャップがある。
☑ 意識調査では約6割の事業者が今後のVR活用について懐疑的。実際にVRを導入した事業者の6割以上が効果を実感。今後も利用を継続していくため、一度VRを試せば継続的に活用していく傾向。
ダウンロードはこちらから。ぜひ、今後の新人研修・社員研修にお役立てください。
ウォルマートは言わずとしれた世界最大のスーパーマーケットチェーン。世界最大の売上額を誇る企業として有名ですが、それでも気を抜けない状況が続いています。
というのも、eコマースの台頭によって、小売業者は長く苦戦を強いられているから。かつて小売業界でウォルマートと双璧を成していた大手のシアーズでさえも、ネット通販市場の拡大で後手に回り、今月破産してしまいました。
そんな中、ウォルマートは生き残るため、次々にテクノロジーを駆使した施策を打ち出しています。決済がすべてスマホで完結する店舗の出店を進めたり、心拍や体温を計測するショッピングカートを開発したりと、興味深い話ばかり。
そしてその一環として、ウォルマートは研修にVRを取り入れることにしたというわけです。
今回導入が決まったのは、一体型VRデバイスOculus Goを使った研修システム。
VRスタートアップSTRIVR Labs(ストライバーラボ)の開発するVRコンテンツを搭載しています。
参考:
【VR研修9選】4つの最新研修事例と5つの研修提供会社をご紹介!
STRIVRの制作する主なコンテンツは、対話型の360度映像です。映像ベースのコンテンツは制作と利用が簡単な上、Oculus Goのような安価なデバイスでも動作するため、研修コンテンツに適しているのでしょう。
ストライバーラボは、ウォルマートからのデータに基づいてコンテンツを制作しています。既に従業員の研修用に45以上のプログラムが制作されており、デリミートのスライスや人参などの商品在庫の補充など、店舗運営に関わる業務を網羅しているといいます。
既にウォルマートは17,000個のOculus Goを購入しており、今年の末までにこれらをアメリカ国内の全店舗へ配置する予定。
100万人を超える従業員全員が、VRを使った研修を行えるようになります。
2021年11月リリース「2021年度 社員教育におけるVR活用の意識・実態調査」
世間一般におけるVR研修に関するイメージ(意識調査)と、実際にVRを導入している事業者の体感 (実態調査)の両面でアンケート調査を実施しました。
☑ 意識調査ではVRゴーグル購入や制作費用が高いイメージだが、実態としてはPCやスマートフォンにおけるVR活用がメインであり、年間コストも50万円以下とVRに対するイメージと実態にギャップがある。
☑ 意識調査では約6割の事業者が今後のVR活用について懐疑的。実際にVRを導入した事業者の6割以上が効果を実感。今後も利用を継続していくため、一度VRを試せば継続的に活用していく傾向。
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ウォルマートがこれだけの規模でVR研修の導入に動いたのは、Oculus Go発売の影響が大きいと考えられます。
Oculus Goは、今年5月にFacebook傘下のVR企業Oculusから発売されたVRデバイス。その特徴は、一体型であることと安価であることです。
長い間、VRデバイスはゴーグル単体で動作することができませんでした。
これまでにあったVRデバイスをざっくり2つに分けると、スマホに接続するタイプのものと、PCに接続するタイプのものの2種類です。
スマホを使うものはスマホを着脱する手間がかかり、また、放熱やバッテリーの問題で長時間の使用は不可能でした。
スマホを入れて使うGear VR
一方でPCを使うものは、高性能なPCを必要とするために、導入に大きなコストがかかってしまいます。また、ごちゃごちゃとしたケーブルがあるため、やはり装着にはひと手間かかってしまいます。
Oculus Goは、かぶってしまえばそのまま使える手軽な一体型で、かつ非常に低価格です。
同様の一体型VRデバイスMirage Soloの価格が約55,000円だったのに対して、Oculus Goは32GBモデルで23,800円、64GBモデルで29,800円という価格です。
ウォルマートは2年前から、全国200店舗のトレーニングセンターにおいて、PC向けデバイスOculus Riftを使ったVR研修を行っていました。しかし、このOculus Goの発売がなければ、17,000台の購入・全店舗への配置という思い切った投資はできなかったのではないでしょうか。
このVR研修システムの効果が認められれば、Oculus Goを使った研修システムが広まっていくかもしれません。
VR研修を行うメリットとしては、ほとんど発生しない状況でのトレーニングが可能な点が挙げられますが、まさにこれはウォルマートにとって必要なトレーニング。
11月の第4金曜日に行われる、年に1度の大規模セールBlack Fridayの際の対応法は、普段からトレーニングすることはできませんが、ウォルマートにとっては非常に大事なセールの日。このようなトレーニングに、VR研修は効果的です。
また、自然災害などのケースを作り出して対応を学べることも、店舗運営には大きなプラスとなります。頻繁に起きることはありませんが、起きたときにはハッキリとした対応が求められるからです。
更に、店に据え付けられる前の新たな設備の使い方を習得することにおいても、VR研修は効果を発揮します。
ウォルマートは積極的にテクノロジーを活用する企業のため、新しい設備の使い方を学ぶ機会がよくあります。VR研修を使って設備の導入前に操作方法に慣れておけば、現場のオペレーションはかなり円滑化しますよね。
実際に、ネット注文した荷物を店頭で受け取るシステム「ピックアップタワー」を導入した際には、VR研修が非常に役に立ったという現場の声が多かったようです。
他にも、上述したOculus Riftを使ったVRトレーニングから、VR研修の効果は実証されています。
Oculus Riftを使ってトレーニングを行った従業員は、通常のトレーニングと比べて、研修への満足度が30%向上し、さらに70%の従業員が高いパフォーマンスを示すようになったとのことです。
また、リアルな体験を何度も繰り返し、失敗しても怒られることのない安全な環境で行うことで、研修後は自信を持って業務に当たれるようになるという効果もあったそう。
ただ他人が業務を行っている映像をVRを用いて追体験するだけでも、自信を表すスコアが10%から15%も伸びたということです。
このような実証されている効果もあった上で、ウォルマートは大規模な導入に踏み切ったというわけです。
ウォルマートのVR研修導入が成功すれば、後を追う企業も出現してくることでしょう。
ファミレスでバイトしていた際、しょっちゅう怒られていた思い出がある筆者は、個人的に早く普及してほしいと願っています。失敗しても怒られることのない環境で練習できるのって、すごくいいですよね…。
このような研修システムが広まれば、筆者のように物覚えが悪くても、ストレスを感じることなく働ける世界が実現するに違いありません。今後に期待したいと思います。
参考:
How VR is Transforming the Way We Train Associates(英語)
最後までお読みいただきありがとうございます。
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研修分野のVR活用方法については以下の記事をご覧ください。
【VR研修9選】4つの最新研修事例と5つの研修提供会社をご紹介!