最近よく聞く単語の一つである「VR」。
今回は災害の分野におけるVRのメリットや実際の導入事例について紹介します。
災害への意識や危機管理の甘さが課題となっている災害対策の現場。防災訓練や災害体験を中心にVRは導入されています。
VRを災害対策にどう活用するか、活用するとどんなメリットがあるかを紹介・解説していきますので導入をご検討ください。
世間一般におけるVR研修に関するイメージ(意識調査)と、実際にVRを導入している事業者の体感 (実態調査)の両面でアンケート調査を実施しました。
☑ 意識調査ではVRゴーグル購入や制作費用が高いイメージだが、実態としてはPCやスマートフォンにおけるVR活用がメインであり、年間コストも50万円以下とVRに対するイメージと実態にギャップがある。
☑ 意識調査では約6割の事業者が今後のVR活用について懐疑的。実際にVRを導入した事業者の6割以上が効果を実感。今後も利用を継続していくため、一度VRを試せば継続的に活用していく傾向。
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【目次】
VRを災害対策で活用する活用方法を解説。VRならではのリアリティさを活かした活用が行われています。
VRは防災訓練の現場で活用されています。VRを使用することで、いつでもどこでも防災訓練を行うことが可能。大掛かりな設備や特定の建物でなくても、防災訓練をすることができます。
また、これまでの防災訓練ではどうしても得ることが難しかった臨場感や危機感。VRはリアリティがある映像や音声とともに訓練をすることができるので、臨場感や危機感をも体験することができます。それにより質の高い防災意識に繋がる訓練にすることができます。
また、集団での防災訓練では密になって取り組むことが多い中、VRでは物理的な距離に関する心配が必要ありません。距離をとって訓練を行うことができるため、感染予防にもつながることや、参加へのハードルを下げることにもつながります。
過去の大災害をVRで追体験することで、災害の悲惨さを風化させないことができます。阪神・淡路大震災や東日本大震災など日本史に残る大規模な災害が近年ありました。災害の悲惨さの大きな印象を人々に残しています。
しかし、今後時が経つにつれ、徐々に風化し、忘れて行ってしまうことも仕方のない話。災害への気の緩みや対策の甘さへとつながってしまうことでしょう。しかし、VRで過去の災害体験を行うことによって、リアリティのある映像と共に後世に語り継ぐことができます。
また、単なる映像ではなく被災者の目線に立って体験することができるのもVRの大きな魅力。客観的な資料として、ではなく自分が実際に被災している気持ちになって体験することができます。それにより、災害への危機意識を高く保つことが可能です。
VR空間に指揮所を開設することができます。指揮所とは災害時の現場への指示を出す拠点のこと。VR空間で指揮所を設置することにより、指揮をとるメンバーが集まりやすく、また指揮所の開設に時間がかからないで済むといったメリットから注目されています。
これまでも指揮所をオンライン空間に作ろうとする試みはありましたが、リアルタイムに見ることができなかったり、単なる音声や画像でのやり取りに終始してしまったりすることからなかなかうまくいきませんでした。しかし、5Gの普及による通信速度の向上や、VRを用いることで単なる音声や単なる画像ではなく、リアルタイムでの主観的な映像として見ることができることからVR空間での指揮所開設が注目されています。
ここからはVRを災害対策に活用するメリットを解説していきます。
VRならではの利点としては大きく3点。それぞれ見ていきましょう。
VRを使用することで、いつでもどこでも防災訓練を行うことができます。加えて、VR 技術を用いた防災訓練は,マルチメデ ィアでの防災訓練にはない没入感を与えることもメリット。
また、普通起こりそうにない未曾有の大災害であってもVR空間に表現することが可能。そのため、いざというときの訓練をすることが可能になっています。どうしても実際に防災訓練をするとなれば、リアリティのある災害を体験することはできません。その点がVRであれば解決可能です。
また、VRならではの利点として、後から防災訓練の様子を見返せることも。防災訓練中にどこで間違えた対応をしてしまったのか、どうすれば正解だったのかを実際の訓練中の様子を見ながら振り返ることもできます。繰り返し訓練を行うことも容易なため、反省し改善しといった形でより災害への対策を万全にすることができます。
VRを活用することで、防災に対する意識の向上につながります。
VRを導入することで、同じタイミングでさまざまな災害への防災訓練をすることもできます。これまでの防災訓練といえば、基本的には1度に1つの災害への訓練を行うもの。地震への防災訓練であれば、地震用の体験設備を用意し、実際の揺れを体感してもらう。火災への防災訓練であれば、煙が蔓延する状態を体験してもらう。
体験するための設備も大掛かりなものが多く、一度に複数の災害を体験してもらうことは困難でした。しかし、VRであればデータとして様々な防災訓練を保管し、1つのツールで実際に災害に遭っているかのような体験をしてもらうことができます。
また、それらのツールが小型であることもポイント。準備に手間があまりかからないこともあり、気軽にさまざまな災害への訓練を行うことができます。
VRを活用すれば実際の災害への対応がスムーズになります。これまでであれば、現場に指揮所を作り、そこからようやく組織的な救助活動などを行なっていました。そのため、指揮をする立場の人が現場に行くまでのタイムラグや、メンバーが揃うまでのタイムラグが生じていたことも事実。しかし、VRを用いれば指揮所をオンライン空間に開設可能。それにより、遠隔地からリモートで指示を出すことが可能になり、救助活動へのタイムラグを少なくすることが可能になりました。
また、VR空間であらかじめ災害に対するシミュレーションを行なっておくことにより、突発的な災害にもスムーズに対応できるようになることも魅力。
災害への対応がスムーズになり、より多くの被災者を助けることにつながります。
2021年11月リリース「2021年度 社員教育におけるVR活用の意識・実態調査」
世間一般におけるVR研修に関するイメージ(意識調査)と、実際にVRを導入している事業者の体感 (実態調査)の両面でアンケート調査を実施しました。
☑ 意識調査ではVRゴーグル購入や制作費用が高いイメージだが、実態としてはPCやスマートフォンにおけるVR活用がメインであり、年間コストも50万円以下とVRに対するイメージと実態にギャップがある。
☑ 意識調査では約6割の事業者が今後のVR活用について懐疑的。実際にVRを導入した事業者の6割以上が効果を実感。今後も利用を継続していくため、一度VRを試せば継続的に活用していく傾向。
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ここまでみてきた通り、災害の体験など防災におけるVR導入には多くのメリットがあります。
そこで、実際に防災においてVRを導入している事例を紹介していきます。
こちらは大分県が防災意識の醸成を目的として、災害を疑似体験できるように作成した「おおいた防災VR」です。
地震編 、津波編 、土砂災害編 、洪水・浸水害編 、台風編などの多岐にわたる災害を擬似体験することができます。
よりリアルに近いアニメーションにはとても臨場感があります。
また、避難所での「密閉・密集・密接」を避けるようにとの注意喚起などのコロナ禍での防災も呼びかけてくれています。
学校や地域の防災学習での活用をはじめ、現在のようなコロナ禍においても個人でできる防災対策を提供することに成功している事例だと言えるでしょう。
東京消防庁では、VR活用の一環としてVR防災体験車を活用しています。
VR防災体験車とは、最新のバーチャルリアリティ技術を活用した防災訓練専用のVR機能搭載大型車両です。
ヘッドマウントディスプレイで見る映像を通して地震・火災・風水害の災害を疑似体験できます。
それぞれの災害の実相に合わせ、座席が動いたり、水しぶき、熱、においなどの効果が発生します。
360°の立体映像と揺れ・風圧・熱などの演出による、地震・火災・風水害の疑似体験をして、いざという時のために、命を守る力を身につけます。
株式会社理経が提供する「防災訓練用VRシリーズ ~地震、火災、水害をVRで体験!~」では、これまで延べ2万人以上の方が体験しています。
地震、火災、水害といった多様な災害をVRで疑似的に体験でき、さらにすべてのコンテンツが13歳未満の方も体験可能な単眼仕様です。
複数台のVRゴーグルを同時に再生する一斉再生機能にも対応しています。
種類の異なるVRゴーグル、大人用・子供用ゴーグル、VRゴーグルとタブレット端末など、様々な組み合わせが可能です。
火災避難の体験では、実際の訓練では体験することができない火災時の煙による視界不良を体験できます。
株式会社理経が提供する「防災訓練用VRシリーズ ~地震、火災、水害をVRで体験!~」では、火災体験の他にもさまざまな防災訓練ができます。
土砂災害体験では、土砂災害の恐怖を感じられる内容となっています。
一方、地震体験では、地震の揺れをVRを使用して体験し、家具の固定やガラスの飛散防止など対策について学べます。
また、はしご車に乗って地上40mの高さからの360°映像を体験できる「はしご車乗車体験」など多岐にわたる体験がVR上で用意されています。
この株式会社理経の防災訓練用VRシリーズはさまざまな自治体や企業で活用されています。
自治体では大阪市やさいたま市、鴻巣市など、企業では、野村不動産株式会社などで導入されています。
Bizemoの防災体験VRでは、黒煙の中での避難や土石流など、現実に体験が難しい状況をVRで疑似体験することができます。
従来の防災訓練の課題として、
という参加者の意欲喚起の面という3つの面が課題として存在しました。
しかし、こちらの防災体験VRでは従来の訓練ほど機材や準備を必要とせず、リアルな災害体験により個々の正しい避難方法の習得が期待できます。
また、多種多様なコンテンツにより参加者の意欲喚起に繋がるため、VRを活用した防災訓練は有効だと考えます。
NHKでは、震災の記憶を後世に伝えるため、被災した建物や街並み、人々の暮らしぶりなどを臨場感のある360°VRカメラなどで撮影してきました。
ここではこれまでに制作した”体験型”のVRリポートやコンテンツの一部がまとめられて掲載されています。
地図に表示された場所の名前をクリックすると、実際のドローン映像やVR動画が表示されます。
現在の復旧状況や以前の悲惨だった状態を考えると強く心を打たれる映像となっています。
災害や大きな事故が発生した際、できるだけ速やかに多数の負傷者に適切な処置を行うためには、消防機関・医療機関・災害現場の密接な連携が必要です。
そこで災害時には、各機関の職員が集まる「指揮所」が災害現場近くに開設されます。
指揮所は現場から集まる情報を分析し、適切な指示を出すための、いわば司令塔となる場所です。
しかし、災害現場が山間部や遠隔地の場合や、交通機関の被災などにより、関係機関の職員が速やかに集合できないケースもあります。
指揮所開設の遅れは、救急活動全体の遅れにつながってしまう恐れがあります。
そこで防衛医科大とKDDIが協力し、5GとVRを活用して指揮所の機能をVRシステムの仮想空間上に開設しました。
これによって、遠隔地から災害現場を指揮・支援するという実験を行ないました。
指揮所がVR空間にあれば、距離的問題はなくなります。
それは、一分一秒を争う災害地の救急活動において大きな課題解決につながるに違いありません。
の三者が遠隔地からVRシステムにログインします。
VR空間内で、リアルタイムで送られる360度映像で状況確認を行いながら、現場で救急活動に携わる隊員たちへの指示や支援を行うことができるのです。
また、救急活動の大まかな計画を立てるため、災害現場の全体像の把握が必要ですが、通常の平面映像では現場全体が把握しにくいという課題がありました。
しかし、360度カメラを活用したVRをであれば、遠隔地からの状況把握や現場との円滑なコミュニケーションが可能になるのです。
今回は災害におけるVR導入のメリットとその活用事例について紹介してきました。
実際の防災訓練がしづらくなっている昨今ですが、上手くVRを導入すれば防災意識の向上や知識を増やすといった効果を期待できます。
また、まれに起こってしまう訓練中での事故も、VRを導入することで効率的かつ効果的に体験を行うことができるので、安全性の確保も実現できます。