2016年のVR元年以来、さまざまで業界や場所でVRを使ったサービスが提供されるようになりました。
今回ご紹介するのは、医療業界の「うつ病治療」の現場でのVR導入についてです。
医師と対面で治療を行う印象が強い医療行為ですが、「うつ病治療」においてはVRを使うことにどのようなメリットがあるのでしょうか。
この記事では、VRをうつ病治療に導入するメリットとうつ病治療の事例を解説。
また、VRの導入が医療現場と患者の双方に及ぼす影響について知識を深めることができるでしょう。
記事の後半では、うつ病治療のVRコンテンツを開発・提供している会社の紹介をしています。
医療現場でVRの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
【目次】
日本の精神疾患の患者数は420万人にのぼり、その中の3割がうつ病でうつ病で苦しんでいると言われています。
うつ病などの精神疾患治療では「認知行動療法」が効果的とされています。
「認知行動療法」とは、物事の捉え方や見方を変えていくことで、気持ちのあり方を変えたり、心のストレスを軽減していく治療法。
VRを認知行動療法に取り込むことで、ポジティブな感情への刺激を起こし、効率的に治療を行います。
従来のうつ病の治療は、専門の医師やセラピストによる心理的療法と抗うつ剤などの投薬でした。
そこへVRが導入されることによって、どのようなメリットが期待できるのでしょうか。
詳しく見ていきましょう。
認知行動療法にVRを取り入れると、従来の対面式に比べて大きな没入感を得ることができます。
概念学習・体験学習・実践の3つのステップを繰り返すことで、不安感を払拭したり、動揺する場面を回避する方法を見つけ出すのが認知行動療法。
これらの学習をVRを通して行うことで、さまざまなシーンやアクシデントを体験し、医師やセラピストが伝えたい思考法やパターンを習得していきます。
うつ病患者の治療法として、不安を感じる場面によってどのように考えるのか説明を行う方法があります。
従来の対面での会話方式では医師と患者の間で齟齬が起こりやすいと言われていました。
しかし、VRを導入すると、映像を共有しながら説明できるので、認識の違いが大幅に減少するでしょう。
うつ病の治療は、治療にあたる医師やセラピストのスキルに依存する傾向にありました。
そこで、VRを治療のコンテンツとして利用することで、医師やセラピストのスキルの均一化を図れます。
うつ病の治療には、定期的な通院が望まれますが、新型コロナウイルスの感染拡大もあり移動が難しいのが現状。
また仕事や学校、子育てなどに追われるあまりに、患者が通院治療や面談に十分な時間を取れないことも多いと言われています。
医師やセラピストにとっても、うつ病の治療や面談は1つ1つに時間がかかるため、VRによる治療が実現することで、大幅な時間の短縮が期待できるでしょう。
医療現場にVRを導入し続ける会社があります。
その会社、ジョリーウッドは、VRを活用したうつ病治療・改善の研究に取り組みました。
健康な人が使う印象のあるVRですが、うつ病治療においてはどの様な影響出たのでしょうか。
株式会社ジョリーグッドは、VRを活用したうつ病の治療についての研究結果を発表しました。
国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センターと共同で行ったVRベースによる認知行動療法では、被験者7名のうち半数以上に、うつ病の症状改善が見られました。
株式会社ジョリーグッドのVRコンテンツについては、あとで詳しく紹介します。
上記の日本最大認知行動療法の研究機関と、VRによるうつ病治療を研究した結果は、ヨーロッパの行動認知療法学会でも発表されました。
健康な人や不安症の人を対象にしたVR活用ではなく、うつ病治療を目的としたVR活用は、うつ病治療を目指す世界でも意欲ある先端的な取り組みとして受け止められています。
なお、精神医療の現場において、「VRを使った治療は、うつ病患者にも問題なく行える」ということも併せて確認されました。
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VRのコンテンツを開発する企業は増えていますが、うつ病治療に特化したVRの開発はまだそれほど多くありません。
ここでは、うつ病治療のためのVRを開発もしくはコンテンツを提供している、2つの企業と1つの機関を紹介します。
株式会社ジョリーグッドは、上述のVRを使ったうつ病治療による研究をおこなった会社。
この会社では、うつ病や社交不安障害、ASDの症状を持つ人へ最適な精神療法を行う特化型治療VRを開発しています。
社会人や学生など、それぞれの立場や状況にあった社会的場面をVRで体験し、行動変容を起こしてポジティブな気持ちを持てる未来を目指しています。
国立精神・神経医療研究センターは、日本における最大の認知行動療法研究機関。
この機関では、産学官の連携の1つとして、民間のVR開発会社が作ったVRコンテンツを使って認知行動療法を行う研究をしています。
また、日本最大の認知行動療法の研究機関として、さまざまなデータを収集し、ポジティブな感情を引き起こせるVRの活用をおこなっています。
BiPSEEは、心療内科医の臨床経験をベースにしたVRでうつ病治療を目指しています。
心療内科医が企業設立の一員となっていることもあり、うつ病のリスクファクターとなっている「反すう」を抑制することに特化したVRを開発。
医療現場や患者の特性に精通したメンバーいるため、コンテンツの使いすぎを防いだり、複数のシーンから指定したシーンを見たりするなど、VRを活用する治療においても細やかな配慮が見られます。
VRを利用したうつ病治療について紹介しました。
従来のうつ病治療では、長く定期的な通院や投薬など、治療がストレスになることが多くありました。
また、セラピストや医師との対話もうまくいかず、意図を汲み取れずに治療が進まないことも。
VRをうつ病治療に活用しようと開発している企業は、ポジティブな感情を持ちながら治療に与えるようなVRの開発を目指しています。
うつ病の治療法に何か変化が欲しい時には、VRの導入を検討してみてはいかがでしょうか。