以前のHTC ViveとOculus Riftの比較記事で、それぞれの本体購入にどれだけのコストがかかるのかを説明しました。しかし、実際にPC用のVRデバイスを動作させるには、本体に加えてパソコンも必要になります。
この記事では、HTC Viveを動作させるのに実際に必要になるパソコンのスペックに加え、その他の導入に必要な注意点についても紹介したいと思います。
先日、筆者が自宅に友人を招いてHTC Viveで遊んでいたときのことです。
VRゲームに没頭してしまった彼は、「10万円でこれが遊べるなら、僕も買ってみたい」と言い出しました。しかし、彼はモバイル用のノートパソコンしか持っていません。Viveのためには新しくパソコンを買う必要があることを伝えたところ、残念そうな顔で「諦めるよ」とのことでした。
Vive本体がとても高額なことから生まれてしまう誤解ですが、Vive単体ではゲームは動かせません。ViveはあくまでHMD(ヘッドマウントディスプレイ、つまり頭に装着するモニタ部分)であり、それを動かすには非常にスペックの高いパソコンが必要となります。
現状、VRデバイスをノートパソコンで動作させることは現実的とはいえません。ノートパソコンしか持っていない人は、VRデバイスを動かすためにデスクトップパソコンを新たに買う必要があるでしょう。しかしながら、デスクトップパソコンを既に所有しているユーザーであれば、小額の投資でVRデバイスを動かすことができるかもしれません。
というのも、上で「非常にスペックの高いパソコン」と書きましたが、性能が求められるパーツは限られているからです。
パソコンは、マザーボードやCPUやメモリ、グラフィックボードなどといったパーツで構成されています。VRを動作させるのに最も重要なパーツは、このうちのグラフィックボードという、名前の通りグラフィックを処理するパーツです。その他のパーツがそこそこの性能でも、グラフィックボードが要件を満たしていればVRは割とすんなり動いてしまいます。
筆者のパソコンの主なパーツのスペック
OS | Windows 10 Homeエディション |
---|---|
マザーボード | GIGABYTE GA-Z68A-D3H-B3 |
CPU | インテル Core i5-2500K @3.30GHz(4コア) |
メモリ | 8GB(4GB×2枚) |
グラフィックボード | GIGABYTE GeForce GTX 1070 G1 Gaming |
電源 | 850W |
実は筆者のパソコンのパーツのほとんどは、今から5年以上前に購入したものです。
例えばCPUは インテル Core i5-2500kというもので、2011年に発売された、しかも当時でもミドルクラスのCPUです。実は、HTCが公開しているHTC Viveの最低動作要件であるインテル Core i5-4590を満たしていません。
また、メモリはたったの8GBしか積んでいません。Macbookですら8GBのメモリが標準搭載されている今日、ゲーミングPCとしてはかなりロースペックです。
それでもVRゲームを快適に動かすことができるのは、グラフィックボードの性能が高いからです。
上の表に記載した通り、筆者のパソコンはGTX 1070というグラフィックボードを搭載しています。実売価格は5〜6万円程度です。
2016年の夏に日本発売されたこのグラフィックボードは、旧世代のグラフィックボードの性能を遥かに凌駕しただけでなく、非常に高いコストパフォーマンスを誇っており、発表時にはネットを大きく騒がせました。
この年のグラフィックボード性能の大きな進化が、VRの普及を後押ししたともいわれています。
同時期に発売されたGTX 1060(実売価格約3万円)、GTX 1080(実売価格約7〜9万円)も共に高い性能を誇っていますが、価格と性能の面から考えて筆者はGTX 1070を購入しました。
結果、PCとしては要件を満たしていないながら、安定した動作でVRゲームを楽しめています。
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しかしながら、要件を満たしてもいないのに高価なViveを購入するというのは不安なもの。そこで、ベンチマークソフトをいうものを使い、自分のパソコンの性能を調べてみました。
こちらからダウンロード・インストールし、実行するだけで自動で調べてくれます。
診断が終わるとこのように結果が表示されます。筆者のパソコンはこのように、VR Readyという結果でした。
Viveの購入を考えている人は、必ずこのベンチマークを実施して、自分のパソコンがVR Readyであることを確認するようにしましょう。ちなみにOculus Riftの動作要件はViveとかなり近いので、Riftの購入を考えている人にもおすすめです。
こちらの記事で紹介したように、Viveの特徴は実際に空間を歩き回れるルームスケールです。当然ながら、部屋にある程度の広さ(最低でも2m×1.5m)が必要となるので、部屋を予め片付けておく必要があります。
筆者は部屋を片付けたものの、そもそも部屋が狭いためこの面積を確保できませんでした。が、ソファーやテーブルの上などの手を伸ばせる範囲はルームスケールとして設定することで、足元に注意は必要ですが問題なく動作させています。
また、対角線上にセンサーを2つ設置する必要もあります。筆者は無理やりカーテンレールの上などに設置していますが、重さもあるものなのでしっかりとした棚の上が理想的です。
ちなみに、Oculus Riftの場合はセンサーがひとつしかなく、また2m×1.5mの広さも必要となりません。Viveに比べれば導入のハードルは低いといえます。
このようにViveの動作要件を挙げてみると、改めてViveの導入のハードルは高いと感じざるをえません。 同じPCVRデバイスであるOculus Riftについても、部屋の広さ以外はほぼ同様の条件が必要になるため、やはり金銭面での負担は大きいです。
しかしながら、筆者は最低要件も満たしていないパソコンで、一人暮らしの狭い部屋で、それでもViveを快適に動作させることができています。完璧な環境がなくても、工夫次第ではクリアできる課題ばかりなのです。
あなたも、VRのある暮らしを始めてみませんか?
参考リンク:
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